[コメント] 砂の器(1974/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
昔の記憶では犯人の動機は、「自分の忌まわしき過去を隠す為に、それを知る者を手にかけた」と言う印象が強かったのですが、今回は、個人的にとらえ方が少し違っていました。
・・・少年は、毎日辛くて辛くて、死ぬような思いをし続けて、生きるのが辛くて、もうあのまま、父親と一緒に命を落とす事を望んでいたのではないだろうか。もしかして、「父の病とともに、自分の人生を終える事」が、彼の人生の唯一の美しい希望と幸せだったのかもしれない。そして、父親と共に生きる生活は、いつしか彼にとって、実は、あの交響曲のように美しい瞬間となっていたのではないだろうか。
父親が救けられ、自分に暖かい生活が与えられても、それはまったく彼の望みではなかったかもしれない。この時すでに、彼は被害者を(無意識レベルかもしれないが)怨んでいたような気がする。そして、最後の「彼は音楽の中でしか父親に会えないのだ」の言葉通りだとすると、音楽は、長年かけて彼が作り出した父親(との美しい生活)の代償だった。・・・はず、が、被害者に再会した事で、その本末が転倒する。
被害者の望み通り父親に会えば、音楽への道は閉ざされるかもしれない。そしてまた、自分の人生は「この男」のためにくつがえされる。
親切づらした、良心の陰りのない「この男」のために、自分がずっとつちかってきた、たいせつな価値観が壊される。
「この男」のために、「この男」のために。
・・・私の実に勝手な解釈ですが、人の命を奪う動機としては、その方が納得が行くのです。
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