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[コメント] ミツバチのささやき(1972/スペイン)

観客はそのあまりに痛ましい姿に驚き、思わず目を背けてしまいそうになる。
田原木

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







純粋な少女が周りからの疎外・孤独を感じ、次第に内的な世界へと没入していく様子を幻想的なタッチで描いた作品。

まず、本作ではフランケンシュタイン・毒キノコ・傷ついた男がそれぞれ否定され・踏み潰され・殺される。つまり、彼女が興味を持ったものの存在が全て疎外されているのだ。とすれば当然これらに興味を持った彼女自身にその疎外感は波及していく。その過程で娘に発せられた「こっちに来なさい」という父親の台詞は深い。彼女は制止を振り切り、地平線の彼方へと走り去る。

また、いつも一緒に居る同じ年頃の姉は、妹よりも精神的に成長しており、いくつかの場面でその優位性が示される。 例えば、映画の解釈、列車に対する反応、学校の授業、ルージュ、死んだ振り、火遊び。 特に火遊びに至ってはその優位性は決定的であり、もはや妹は一人焚火をする他ない。少女の強い孤独を感じさせるシーン。

このような周りからの疎外および孤独を感じた少女はそこから逃避するも結果空しく連れもどされる。そして、一人夜中に起き上がり、月明り射すベランダより祈るように呼びかける。 その姿は一見美しいのだけど、むしろ私はそのあまりの痛ましさに驚き、思わず目を背けてしまいそうになった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (6 人)動物園のクマ[*] ジョニー・でぶ ペペロンチーノ[*] Santa Monica[*] ぽんしゅう[*] けにろん[*]

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