[コメント] マルコヴィッチの穴(1999/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
起こることが、ことごとく面白い。子供の発想というか、子供の頃に誰もが妄想するようなくだらないことを、いちいち思い出させてくれる。誰でも一度は妄想しそうなこと、でもアホらしすぎて誰も映画にしなかったことを映画にするということは、これはやはり映画の可能性を広げているわけで、評価されなければウソだと思う。
子供の発想にはオチなんかないし、ドラマツルギーなんてものもない。だからこの映画は様々な映画的制約やハリウッド文法、クソみたいなシナリオ作法などから自由でいられた。そしてその自由さこそが、実は一番映画らしかったんだ。自由でいいんだ。ホントは映画って、これくらい自由なものだったんだ。この映画はただクソマジメに「今起こっていること」を見せているだけで、いかにも映画ファンが喜びそうな凝った映像や小難しい屁理屈はない。そんなものは妄想の純度を下げるだけで、本当はクソの役にも立たないんです。そうやってダメになった映画はいくらでもあるし、MTV出身だというこの監督がその轍を踏まなかったことは、いくら絶賛されてもいいと思う。当たり前に撮ってていいんです。だからこの映画の面白さは、普段映画を観ない人にも届くだろう。マルコビッチなんか知らない小学生でも、寅さんしか観ない田舎のじいちゃんばあちゃんでも、この映画を観たら笑うでしょう。そういう映画をベタではなく作れるっていうのは、実は凄いことなんだと思う。
マルコビッチが電話でカーペットを注文しているという、よりにもよってものすごくくだらない場面を体験したやつが、高速道路の脇に落っこちてきて「最高だ! 最高だ!」って言うでしょう。この映画もそう。ものすごくくだらない。最高だ!
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