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[コメント] シンドバッド7回目の冒険(1958/米)

「投げた槍が怪物に刺さる」。これをワンカットで見せられる、という技術を完璧なまでに確立してしまった。
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 無論この映像技術は本作の特撮担当レイ・ハリーハウゼンの師匠であるウィリス・オブライエンが『キング・コング』で既にやっているので、これが最初というわけではない。だがよく観ると、刺さる前と後とでの位置のずれが生じている(それでも凄いと思う)。しかしハリーハウゼンはその技術を本作で完成させた、といってもいい。人間の動きとモンスターのそれとが、同じ画面の中でシンクロし本当に戦っているようにしか観えない。ましてやシンドバッドはガイコツ剣士とチャンバラまでしてしまう。どんな映像でも生み出してしまう「CG」というものが無かった時代の技を、十二分に堪能できる。ソクラの魔術で変身した怪物サイレンが踊るシーンは、後の『シンドバッド黄金の航海』の女神像カーリにも繋がってくる。くねくね動く腕が面白い。

 ちなみに「ダイナメーション」の撮影方法はこう。リハーサルでは兵士役の人間と一緒に演技をして、本番ではその殺陣を一人で行う。出来上がったフィルムを、今度は小型スクリーンに映し、その手前で怪物やら何やら(ここではガイコツ兵士)のモデルアニメーションを撮影する。それが出来たら、最後に土台となっていた部分を合成で隠して完成……というもの。何でも、カメラと小型スクリーン用の映写機が同じ方向にあるので、撮影の際に大きなスペースを確保する必要が無いそうである(専門用語でいうと「フロントプロジェクション」という技術の応用らしい)。

 こんな技術を確立させ、恐竜やら神話の怪物、果ては宇宙怪物まで全てを作り上げてしまうハリーハウゼンは、もはや怖いもの無し。にも関わらず、彼がオスカーを手に入れたのは現役時代ではなく「技術功労者」としての評価としてのこと。90年代になって、彼の技術にアカデミーの評論家の方がようやく追いついた、ということか?だとしたら遅れすぎだ。

(評価:★4)

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