[コメント] 不思議惑星キン・ザ・ザ(1986/露)
ロシアは私にとって非常に興味深い国である。 機械式腕時計やロシアン・カメラなどのメカやロシアン・サイエンス・フィクション小説にかつて私は大いに魅せられたものだ。 さすがに人類を初めて宇宙に送り込んだ国だけあって、科学的な面での独創性は他の国と一線を画している。 タルコフスキーの『ストーカー』やソクーロフの『日陽はしづかに発酵し』(共に原作はロシアのSF作家ストルガツキー兄弟) などの独特の雰囲気を持った作品がロシアで製作されたのも納得できる話だ。
さて、『不思議惑星キン・ザ・ザ』。かねてよりその評判を聞いてはいたものの、残念ながらつい最近まで鑑賞した事がなかった。 つい先日(02年1月)、やっと劇場でリバイバル上映されたのを見たのだ。陳腐な感想だが、凄かった。こんな映画があったのか!と思った。「ストーカー」や「日陽はしづかに発酵し」等の重厚で奇妙な世界観とは異なった不思議な感覚。思わず吹き出す登場人物のしぐさ。寡黙で無表情で大酒飲みなロシア人が作った とはとても思えない、ぶっ飛んだユーモアあふれるストーリー。 劇終了後、内容の素晴らしさに感動すると共に、こんな素晴らしく独創的な作品が15年も前のロシアで作られていた!という衝撃に、私は しばらく椅子から立ちあがることができなかった(ホントです)。劇場にいた観客達も皆、口の端をほころばせていた。この作品が上映された当時は批評家・観客の評判は惨憺たるものであったそうだ。「税金かけて、こんな無駄なもの作りやがって!」という怒りだったそうだ。 ペレストロイカ真っ最中とはいえ、それまで計画経済・5ヵ年計画とかでなんとかやってきた国民にこの映画見せたら、そりゃ怒るわな。しかし、その後、若者を中心にカルト的人気を得たというのも良く分かる。私自身も鑑賞後、キン・ザ・ザフリーク になってしまったんだから。
旧共産時代の灰色のイメージや凍てつく寒さ。クルスク沈没、北方領土、チェルノブイリ、ロシアン・マフィア、ムネヲハウスなど一般的な日本人が抱くロシアのイメージは良くはない。 しかし、キン・ザ・ザを見た観客は皆、この作品を好きになると同時にロシアに対する印象も少なからず変わったはずだ。そういった意味でも21世紀にキン・ザ・ザがリバイバル上映された意義は大きい。 まあ、そのような大それた事はともかく、こんな作品に出会えて私はほんとに幸せだ。製作者達に最大のリスペクトを込めて「クー!」したい。
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(追記) この作品を鑑賞し、ロシアに興味を持たれた方は是非、アエロフロート・ロシア 国際航空に乗ってモスクワへ行って見てください。今では、昔のツポレフとかイリューシンといった旧ソ連製の飛行機ではなく、エアバスを導入してサービスも向上してはいるけどロシアンパワーは未だ衰えず。機内でのロシア人スチュワーデス(大概、大柄な怖いオバサン)のたどたどしくも微笑ましい日本語アナウンスにキンザザ的なものを感じるでしょう。
「ソーリーデェーワ、ミーナスァーマ、アリガットゴジャマチタ」
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