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[コメント] 戦場にかける橋(1957/英=米)

今のご時世からすれば牧歌的とさえいえなくもないこの作品が、しかし「無言」で訴えかけるものの意味は計り知れず大きい。
terracotta

戦争を身をもって体験していない私が、牧歌的なんて言う資格はないのだが・・・・。

「無言」といったのは、この映画は特定の主義主張からのみの視点でつくられたものではない、ということだ。その証拠にナレーションがない。英国、日本、アメリカ、タイ、いずれの立場にもよりかからず、淡々とできごとを描く。最後の最後まで叙事的だ。にもかかわらず、そこで描かれる構図によって、私たちは英国軍人と日本軍人、アメリカ軍人と英国軍人、だれでも助けてしまうタイの人々、というようにそれと意識することなく比較を行っているのである。なーんて大げさに言わなくたって映画とはそもそもそうしたものかもしれないけれど、この映画の成功はそれをきちんとやったところにあるんじゃないのか。だからこそ、説得力があるんじゃないのか。

今の時代に、誰が600年も長持ちする樫の木への敬意を忘れずにいるだろう。いやきっといるはずですが、はやり廃りの激しいご時世、ついつい目先のことばかりにとらわれていないでしょうか>自分自身。SEなんて因果な商売、今自分が作っているものが5年後10年後ですら残ってくれているのだろうかなんてひそかな不安を禁じえない(もちろんシネスケの命は永遠だが)。そんな私にしてみたら、英国軍人の誇りを見せてやると意気込んで立派な橋を作ろうとする、そして作ってしまったニコルソン大佐がとてもうらやましいと思う。こういうモノ作りの魂が、現代社会に対して持つ意味は大変大きいと思う。

しかし、そんな人間の思いも人の命も何もかも壊してしまうのが戦争というものであるという哀しい真理は、いつの時代も変わらない。

(評価:★4)

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