[コメント] キャスト・アウェイ(2000/米)
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多くの人がそうである様に単純な冒険サバイバルものかと思っていた。あまつさえコメディタッチじゃあないかとさえ思っていた。完全な娯楽映画なのではと……。ところが、蓋をあけてビックリ。これはどう考えてもメッセージ性重視の映画だ。
最初は“時間のない無人島の生活を通して時間に追われる生活からの脱却をオススメ!”みたいなありきたりな落とし所だと思っていたが、どうやら、そんな単純なものじゃないらしい。チャックは一見時間のない無人島で、壁画に時を刻み“今何時か分からなくなる様な罪をおかしてはならない”とつぶやく。結局人は生きている限り時間からは逃れられない。あるのは有意義な時間かそうでないか。「Cast Away」は“見捨てる”とかそんな意味。見捨てる。見捨てられる。見捨てたい。見捨てたくない。誰が? 何が? この映画でのそれは何かを考える事で、いろいろなものを拾う事ができる。
例えばクリスマスプレゼント。
ケリーは写真入りの懐中時計を送った。漂着後、懐中時計は止まり写真だけが残る。時は止まっても存在のみが残る。チャックが送ったのは“日記帳”と“ポケベル”と“ハンドタオル”と“指輪”。“日記帳”は時間の流れを記すもの。2人の時間は一度も記される事はなかった。“ポケベル”は他からの束縛。帰還後、チャックのひつぎにはポケベルも入れられている。“ハンドタオル”は日常的に使うもの。チャックの文化的な日常は全てリセットされた。再会時ケリーはタオルを貸すがチャックは最後にケリーを帰す。指輪は約束を表す。果たされる事のなかった約束。
届け物についていた羽根、帆に描かれていた羽根、墜落寸前に腕時計をとり顔を洗い絆創膏を剥がした事、火、ケリーの登場シーンのコピー、ケリーが離婚したのは弁護士、再婚したのは歯医者だという事、虫歯治療、届け物の中で唯一役立たなかった“離婚同意書”、ボールの贈り主の誕生日メッセージ“世界で一番美しいものは世界そのもの”、自殺テストのロープ、乗り越えた波、捨てたオール、ニコライにあげたもの(スニッカーズとCDプレーヤーとエルビスのCD)、棺に入れたもの(ケイタイ、ポケベル、写真、エルビスのCD)。ウィルソンの存在、クジラの存在、最後の犬の存在、冒頭の十字路とケリーの家の前の十字路と最後の十字路……。
こうして書き出すとえらい詰め込み過ぎだなァと思うが、作中では「メッセージです!」という使われ方はしていない。人によっちゃ「そりゃ考えすぎだ」と言う人もいるだろう。でも、シーンひとつひとつ、小物ひとつひとつが、見る人それぞれの解釈の中で鮮烈なメッセージとなって生きてくる。何ひとつ拾えない人もいるし、多くのものを拾った人もいるだろう。流れ着いた板も心を働かせなければ帆にはならなかった。
いい映画だ。
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