[コメント] 千と千尋の神隠し(2001/日)
と、解釈はコメントだけで控えておいて。
面白かったというのが、第一の感想。
らいてふ氏やtomwaits氏のレビューを読み、自分が考えていたよりも 遥かに多くの引用から成り立っている作品であることを実感した。 日本に根づく伝承や神話などからの引用は秀逸であった。 大人にしかわからないとしても、いろいろな引用が隠されているのを 見つけるのは一つの楽しみである。
しかし、過去の自分の作品からの引用は、素直に受容できなかった。 この作品はいわば、宮崎駿のコンピレーション物、「NOW宮崎」といった 趣きであった。(城、自然との共生、化け物、空中浮揚、豚、魔女などなど) 昨今の、オリジナルアルバムよりベストアルバムが売れる、 コンピレーション物はさらによく売れるという状況を想起させる。 実際、引用元の宮崎作品よりも、本作のほうが大幅に観客を動員している。
もちろん、引用しても新たな血肉が通っていれば、それはオリジナルだが、 どうにもコンピレーションアルバム同様、元の引用のもつ魅力に縋っているような 印象を受ける。
また、ねじ式の眼医者の引用など、ただただ引用を積み重ねている印象も 受ける。どうにもお手軽なアラウンド・ザ・ワールド的感覚、世界中のもの をミッ○ーの前に集めてみましたよな、ネズミーワールド的なちゃちさ に宮崎作品、ジブリ作品を近づけていく、危険な行為に映る(グローバルスタンダード化?)。ジブリ美術館はその顕れか。
とはいえ、本筋の話はオリジナルであったし、秀逸な画も随所に存在した。 しかし、あちこちに貼られた伏線がぐいぐいと観る側を引っぱることは なかった、他の方も指摘のように、それは説明不足や余韻ということとは、 また別の次元の話である。背景の質がキャラに追いつき、いつのまにやら 抜きさってしまっているのも気にかかる。
面白かったのだが、観た時期が公開後半年以上経過した今ごろで、子供の姿 などはどこにもなかったのも、4点に届かなかった要因の一つかもしれないが、『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』のような溢れ出る魅力を感じず、どうしても 解釈や批評に縋ってしまう自分の姿があった。
優れたファンタジーは、声が届きえない腐りきった大人にすら、届くものである と考えるので、★3,5。
*それにしても、本作のレビューの多様なことよ。(文字数でいったら、シネスケ 最長?)ビデオ化されたらさらにレビューは増えるであろう。本作において、各コメンテーター諸氏の個性がかなりはっきりうち出されていて、興味深かった。
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