[コメント] WXIII 機動警察パトレイバー(2002/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
☆怪獣映画ファンとして
時代遅れの界面を彷徨った実写特撮が、ガメラや最新ゴジラによって復権しつつある今、アニメでそれをやるからには何か新しいものを提示してくれると思ったのだが、そんなものは見受けられなかった。産み落とさずにいられなかったマッド・サイエンティストのエゴと絶望、産み落とされた怪物の悲劇がやたら感傷的なクライマックスに至るまで垂れ流されるが、初代ゴジラなど往年の傑作に対するオマージュの域で終わってしまい、オリジナリティーと呼べるものは見えなかった。怪獣好きからすれば、十年前のノスタルジーだった。
十年前と言えば、原作がサンデーに連載された当時。その頃、実写は『ゴジラVSビオランテ』が封切られる頃だった。この廃棄物十三号は、外見もコンセプトもビオランテそっくりで、レイバー被せてメカ・ビオランテとはしょうもないマニア・ジョークだと思ったものだ。そう、この原作は怪獣映画ファンの原作者が遊び心でやっていたネタに過ぎない。それを十二年経って、これだけの技術で焼き回しとは…
☆パトレイバー・ファンとして
その遊び心でしかなかった原作は、しかし改良どころか改悪されている。原作は、それでもウルトラマンよろしくパトレイバーが怪獣と徹底的にやり合っていた。ところがこの映画化は、既存の発想を徹底したリアリズムで繋げるという昨今のアニメの悪癖により、原作が再現しようとした往年・特撮のエンターテイメント性が圧殺されている。それと同時にこの映画、第二小隊がぜんぜん活躍しない。あろう事か、後藤隊長まで脇役。“『THE MOVIE』ではレイバーが主役ではない”という暗黙の了解にふんぞり返ったのだろうが、それでも1は第二小隊が主役、2は後藤喜一が主役と言う風に、パトレイバーの輪郭を崩すことはなかった。
そのパート2において押井守は、野明をしてこう言わしめた。
「私、もう、レイバーを好きなだけの女の子でいたくないの…」
一部のファンがこの強引な卒業式に納得できずに、現場復帰を切望したわけだが…現場復帰をさせておいて全く働かさないとはいったい何を考えてるのか? 納得したパトレイバー・ファンはいるのか?
☆オタクとして
それでも怪獣特撮へのオマージュを、これ系アニメが独自で培ってきた既存のアイデアでそつなく繋げているので、クオリティーは悪くないのだが、その既視観も問題だ。サイレントで繋げる押井的景観描写の徐な継承、刑事は敢えて松井さんを使わないことで新味を出そうとしたのか知らないが、極めて良くあるベテランと若手の掛け合い。女の博士はこれまた孤独を背負った才媛で、相変わらずオタク好みのワンパターン。その他コンピューターによるシミュレーションやら、胡散臭い軍人やら、例の如く事件は闇から闇へという落ちの付け方やら…。それらとは逆に、レイバーはじめて見る人には、あのロボット何? …である。全くもって酷い、二重の閉塞感。
本編以上に最悪なのが、あの『ミニパト』って余計な代物、一般客にとってはおよそどうだっていい銃器に関する講義を延々と。ファンの前でパトレイバーを相対化しようという押井の余計な悪意が見え隠れ。もうパート2で終わらしといてくれりゃあ良かったよ。ファンを何だと思ってんだよ。。
こんな映画が出てきたこと自体、アニメ業界が行き詰まり始めた証拠。ボイス母さんの『ガメラ3』評ではないが、「地獄行き」映画だ。
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