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[コメント] ラスト サムライ(2003/米=ニュージーランド=日)

「良きインディアン」よりは、「特異な野蛮人」を欧米人たちは望んでいる。だが、その内に秘めた心では、「カスター将軍」を尊敬し、自分たちの過ちを慰める存在であって欲しい。これもまたアメリカ人の自慰史観映画である。
水那岐

ニュージーランドの大自然(と言いつつゴルフ場も混じっているが:笑)を背景にした、鎧武者軍団と西洋式鉄砲隊との闘いは見事であった。確かに。

渡辺謙はアメリカ的偏見に満ちた脚本に、さまざまなプランや忠告を加えつつ(これは真田広之もだが)生きた日本人の姿を立派に創り上げた。確かに。

だが、それがどのほどの事であろう?

アメリカ先住民狩人の生き残りであるトム・クルーズは、自らの手を染めた汚い闘いについて自責の念にかられている。女子供や老人までもを虐殺した戦争。だから彼は言う、「カスター中佐(将軍は自称)は自己顕示欲にかられた醜い男だ」と。そんな彼について勝元はこう言う、負けると判っていても大人数と戦い抜いたカスターは偉いと。これを日本人が語らせたのなら無知蒙昧の一語で済むことだ。アメリカ人が自慰行為のため見知らぬ野蛮人に語らせた言葉だから問題なのだ。何しろ奴らは力と勇気しか信じないから、ということで。

そう、意見は合うが「特異な野蛮人」であり、「しきたりがくいちがう」ことを欧米人は望んでいるのだ。だから明治時代にして鎧兜に身を包み、はるか過去に手に入れている種子島など見向きもせず、ただ「侍らしく」生きている侍を敢えて描くのだ。人間として同列に並ぶ存在を欧米人はこれ以上欲さない。チェロキー(欧米人の習慣・様式・宗教を取り入れて己が国家を認めさせようとしたアメリカ先住民。結局は迫害された)は必要ないのだから。

そんな裏の考えが見え隠れするから、自分はこの作品を「風変わりなアメリカから見た時代劇」と片付ける気にはなれなかった。成功したアメリカの帝国主義は、遅れて台頭してきた日本の帝国主義が我慢できずに、真珠湾の謀略をきっかけに徹底的に叩き、フヌケにした。日本がサムライの国のままだったら、アメリカ人はその文化を大いに可愛がったことであろう。

だが、残念ながらそういうサムライは徳川の世には死に絶えていたんだけどね。

(評価:★2)

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