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[コメント] ミスティック・リバー(2003/米)

全てはクリント・イーストウッドの名のもとに。
ナム太郎

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 この映画が抱え持つ内容の重さ云々については観た人それぞれの思いがあって当然だと思うし、その思いが映画への評価へとつながっていくこともよくよく納得できることなのだが、今やアメリカ映画界で最も重要な監督のひとりであるクリント・イーストウッドの名のもとに集結した俳優、スタッフが奏でる才能のハーモニーが(内容に関しての好き嫌いについては個人差があるとしても)恐ろしく完成度の高い映画を産み出したというこの事実については、心からの拍手を贈りたいと思うのだ。

 実際のところ、俳優陣の演技は男女共にそれぞれ代表作の1本として認めてよいところだと思う。いつも上手い(という点が実は彼を無冠の帝王的な存在にしているのだが)ショーン・ペンの圧倒的な存在感はもちろんのこと、『フットルース』の頃には今の彼が全く想像できなかった「演技派」ケビン・ベーコンの刑事役も相当ハマっているし、刑事役と言えば理知的な刑事を好演したローレンス・フィッシュバーンも忘れられない。さらに何と言っても今回は最も難しい役だったと思うティム・ロビンス!彼の存在なしにはこの映画は語れないし、最後の締めを任されたマーシャ・ゲイ・ハーデンローラ・リニーの女優陣には心の震えが止まらなかった。とにかく彼らの演技の妙を味わうだけでもこの映画を観る価値は十分にあったと思うのだがどうだろう。

 あまりに長くなるので、ここでは俳優陣に関する部分だけにとどめるが、それらの類稀な才能群を「映画」に昇華させることを任され、しかもそれを決して奇をてらうことなく丁寧にまとめ上げたクリント・イーストウッドこそが「この映画における最重要要素」(ティム・ロビンス)であることは間違いのない事実であり、私はただひたすらにそのことだけを「全てはクリント・イーストウッドの名のもとに」集まった者たちとともに喜んでいたいのだ。

***

 蛇足だが、あの素晴らしいテーマ曲が彼の作であることも深く記憶にとどめておきたい。

 ただし、「もうひとつの『スタンド・バイ・ミー』」という宣伝文句だけは何とかならなかったのか。もちろん『スタンド・バイ・ミー』も素晴らしい映画だし大好きなのだけれど、それとこれとは結びつけて宣伝するにはあまりにもかけ離れた映画だと思うのだが…。個人的にはそれだけが残念でならない。

(評価:★5)

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