[コメント] エターナル・サンシャイン(2004/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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忘れてしまいたい忘れたくない記憶。無くしたい記憶を消したら、深い喪失の中に我が身を見つけた。忘れてしまいたいと思いながらあなたを想っていること。
我ながらベタな感傷ながら、別れた彼女のことを想い出した。ジョエル(ジム・キャリー)が、人生は退屈で惨めだと感じてるのと同じかそれ以上に、誰もが時折は人生に対する大きな不満を抱えたりすると思う。そんな中で喜びを与えてくれる人に出会えたならばどんなにか素晴らしいだろう。個人的な話で申し訳ないが、一人になって以来、ずいぶんと単調で刺激のない、くだらない人生を送っている気がする。時々、一緒に行った場所やら、一緒に見た映画やら、いろんなことを思い出す。新しい何ものも始まらず、新しい人も見つからないような気がする時には、優しい追憶ばかりが浮かび上がる。この映画を見て思ったのは自分のわがままだった。人とつきあっていけばどうしたって軋轢やら衝突やらあるわけで、ましてや恋人同士なら、深い付き合いになれば、もっとお互いを見せ合ってそれによって避け難いぶつかり合いも出てくると思う。それを僕はクレメンタイン(ケイト・ウィンスレット)のように、Too Muchに感じるタイプなんだろう、しばしば息苦しく重荷に感じた。そういうことの積み重ねが別離への引き金になったわけだ。でも、それは愛情の足りなさなのだろうな、と。記憶を消して行くプロセスの中で、必死にクレメンタインを繋ぎ止めようとするジョエルの深層心理(?)での懸命さは、滑稽ながら「愛」を表わしていたと思うし、僕はそれがうらやましかった。自分には人をそれほどまでに想ったことがあるだろうか?僕はそれほどまでに人を想うことのできる人間だろうか? そうして、僕は別れた彼女のことを想い出して、なんとなくぼんやりしてしまう。もう一度あの浜辺で出会う、なんていうロマンティックなことではなく(二度めの鑑賞時、涙がこぼれかけた。あぁ、幼稚なサンチマンタリズム!)、ただぼんやりと記憶の糸をたぐってしまう。
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