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[コメント] 007 慰めの報酬(2008/英)

もう自分より年下になった007たち。これからも自分たちを信じて作っていけばいい。不満はあるがそう思わせる意欲を感じた一品だ。一言いうと、本作は前作『カジノ・ロワイヤル』の完全な後日談なので、それを観てからの鑑賞を薦めます。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
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007シリーズのよいところは、ボンド役者がチェンジする時、前任者のイメージに拘泥しないで、新しいボンド像に挑戦しようとする、そしてニューボンドにあわせて、過去の成功に拘泥せず、積極的に新しいスタイルに挑戦し続けていくことだと思う。失敗例もあるだろうが、その精神こそ長寿の秘訣だと思う。観光気分やホテルライフ、ユーモアやウィット、秘密基地に秘密兵器。「007」でしか表現できないものがあるから、ついクレイグ・ボンドのようなハードなスタイルに対し「何も007でなくとも…」という気持ちも正直あるのだが、むしろそういう黄金手を使わないことになったとしても、今あるべき007を思い描き、ガチで過去の実績に向かっていっている。本作のスタッフは、決して「007」というテーマから逃げていない。

オペラ会場で、ボンドの機転とMI6のスーパーデータベースが組織のメンバーをドミノを倒すように次々と明らかにしていく胸のすくような場面あたりから終盤のボリビアの激闘までの疾走感、ボート対ボート、車対車、レイアウトされたきれいな絵ではないが、とにかく「相手に向かってぶちあたる」のを衝突するカメラ目線でぶちあたって見せたり、とび移った屋根瓦が足元で崩れ、体勢を維持できなくなるや、意識を切り替え向かいのベランダにジャンプする一連の動作時の、運動している本人でしかわからないような瞬時の判断にて運動を行っている(かのように見える)アクションは、CGの発展などでここ十数年に組みたてられたアクションシーンのフォーマットに懐疑し、007がどうとかというよりも、エンターティメントとしてどう観客を楽しませるか、だけを考えて作っているという姿勢が伝わってくるのだ。それこそが、「「007」というテーマから逃げていない」ということなのだ。

次回以降のボンドが、ビギナーキラーから脱却し、粋も苦味も内包したベテラン諜報員のキャラになっていくのかどうかわからない。それは、次のスタッフが、クレイグ・ボンドという成功例に対しどう向かっていくかにかかっているわけだが、本作のような心意気があれば心配にはおよばない。007フォーマットに嵌めた中で完成度をあげていったピアース・ブロスナンのシリーズの頃よりも断然支持したい。ただ、物語(原作)だけはもっといいものが欲しい。物語だけは前作の続きということにして、本当の意味でのクレイグ・ボンドをどう作っていくか、今回は「逃げた」と思う。今回は映画化が見送られたが、後継者として選ばれた作家が書いたきちんとしたものもあるらしいし、今後は期待したい。…期待したいなあ。

…次回、また本作の10分後からのスタートってのは、さすがにないよね?

(評価:★4)

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