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[コメント] エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(2022/米)

バカ映画もおバカ映画もあんまり面白いと思わない自分は、センスのないつまらないやつなんだろうか。これがオスカーとか、ちょっと自信がなくなってきた。。。
おーい粗茶

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







バースジャンプする際に、とにかくおかしなことをする、とかいうのがダメで、自分はくだらない笑いやナンセンスな笑いは好きなほうだと自認していたのに、何も面白く感じられなかった。おかしなことと表現されていることがおかしなことのように思えなかったのが理由だと思うのだが、ギャグの趣味が監督と相性が悪いのかも知れない。特にケツに何かつっこむとか、ソーセージの指を恋人同士でしゃぶりあうとか、M男がスパンキングされて解放されるとか、ちょっと性的なニュアンスのところは本当につまらなかった。下ネタとか艶笑とかエロを笑いにされることで、変態性が良識的に解釈される感じがいやなのだろうと思う。

家族間の衝突も星と星の衝突も同じ、時空的(エブリシングエブリウェア)に一括(オールアットワンス)のもの、というテーマ。世界の破滅を救うことは家族の断絶を回避することと同じというテーマも悪くはないんだけど、この作品がアメリカで受けたのって「親(の考え方)が変わる」ことを描いたからのような気がする。子どもではなく親が成長する話だ。古い価値観がそれを改める話。アメリカで大ヒットしたのは、そういうことがアメリカで、その公開時期に特に求められていたからなのだろう。日本にも毒親問題とかあるけど、親が心を入れ替えるストーリーをファンタジーに絡めて描く、っていう話が思いつかない。日本は親に期待をしていないのか、実は共犯関係にあるのか、それほどの世代間断絶がないのかも知れない。

マルチバースの描き方もほとんど魅力を感じなかった。それこそ子どもの頃から藤子・F・不二夫を読み、最近ではチェンソーマンなんかもふつうに受け入れられる日本のマルチバース偏差値の高さからすれば、自分だけでなく割と多くの日本人にとってもそんなに凄い世界観ではなかったような気がする。

パラレルワールドやタイムリープものがさかんに描かれたり、「世界線」という言葉がごく一般的な会話に出てくるように、今の現実だけが本当の現実とは限らないという物語が好まれるのは、アメリカのZ世代も日本Z世代も似たりよったりなのかも知れないが、本作のような移民の社会の中の同性愛という、マイノリティの中のマイノリティのような2重にがんじがらめな社会構造だったり、仏教国は比較的同性愛に寛容だったりするところがキリスト教文化の国と違っていたり、日米の切迫感の違いが本作の受け入れられ方の違いなのかも知れない。

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)クワドラAS[*] カルヤ[*] もがみがわ[*] けにろん[*] 緑雨[*] ロープブレーク[*] セント[*]

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