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[コメント] ブロークバック・マウンテン(2005/米)

2人(と周囲の人々)の時の移ろいを映像だけで描ききってしまうアン・リー。やっぱりこの監督は上手いね。[シネマライズ2F/DTS]
Yasu

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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ストーリー的には、ゲイではない自分には正直言ってよくわからない部分もある。自分もこんな状況になる可能性もあるだろうな、でも今はそうじゃないからピンとこない、というか。

なので、「なぜこうなったか」はとりあえず置いておいて、「こうなってからどう進んでいくのか」という点のみで言えば、その語り口は実に上手い。

関係を結んだのも一度きりのつもりで、もうお互い二度と会うこともないだろうと思いつつブロークバック・マウンテンを離れた2人。しかし彼らが進んでいった先、すなわち結婚生活は、思い描いていたものとは違っていた。イニスの生活は楽ではなく、ジャックの家庭は妻(とその両親)に主導権を握られている。現状への不満が積もり積もっていけば、かつてのブロークバック・マウンテンでの思い出が輝いてくるのは、無理からぬことなのだ。

2人が出会ってから20年の間、離れていた時期もあった(むしろ2人でいた時間のほうがずっと短い)。仲違いをしたこともあった。最後の逢瀬も喧嘩別れに終わっている。それでも、2人は心の底ではお互いを信じていたはずだ。亡くなったジャックの生家に残っていた、血の染み込んだままのシャツ──激しい殴り合いをしたブロークバック・マウンテンでの最初の夏の思い出──を見れば、そんなことは一目瞭然である。

ジャックが死に、イニスの娘が結婚して彼の手から離れていったとき。この世の様々なしがらみから完全に解き放たれて自由になったとき、ようやく2人は本当に一緒になることができたのだ。むしろ、そこまで待たなければならなかったということが、この愛の困難さを暗に物語っているといえよう。

ちなみに、事前に読んだ映画評に「This movie is heartbreaking ... because it shows the hearts of two strong men (and their women) in the long process of breaking...」というものがあったが、実際に観てみると思ったほど女性たちの心理描写には比重が置かれていなかったのは、ちょっと肩透かし(連れ曰く「女性だとこんな綺麗な話にならないから」とのこと。そんなものかな)。

(評価:★4)

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