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[コメント] ボヘミアン・ラプソディ(2018/英=米)

誰にでも思い入れのあるひとというのがある。(まったくの余談ですが、私もスローイングミュージズ大好きです)
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







高校生の頃の友人からもらった年賀状にこの映画のことが書かれていて、そもそもQUEENは君に借りて聴いたのが最初だったんだよ!ともあって、矢も盾もたまらず映画館に走った。

フレディの音楽から離れた私生活の部分を見ていると、どうしてもその彼女のことばかり思い出してしまった。私は彼女が本当に好きだったことを思い出した。

たぶん同性で、ある意味、彼女ほど好きになったひとはいないと思う。イヤなところもたくさんあったけど、それ以上に魅力的なひとだった。表情豊かで、身振り手振りが大げさで、酒癖が悪くて、美人で、恋ばかりしていて、孤独で、絵が上手で、そしてとびきり優しかった。私がしばらく日本から離れるとなったとき、彼女の家に泊まっていたら「これ、好きだよね?」っていきなりベートーベンの月光を弾いてくれた。缶ビール飲みながら鍵盤を叩く彼女は、本当に本当にかっこよかった。安直なたとえしか浮かばなくてかなしいけど、まるで女神のようだった。

…なんて余談はさておき、ジムの「君には本当の友達が必要だ」って台詞、やっと探し当てて会えたときの瞬時に存在を受け入れてくれる優しい笑顔、さりげなくつなぎあってさすりあう手と手、とってもよかったなあ。

だからこそ、最後のスタッフロールのところで、彼とは最後まで愛しあっていた、みたいな後日談が出てきたのが心底うれしかった。

名曲誕生秘話の場面とライヴシーンが抜きん出て素晴らしかったのは事実だと思うし、この映画の素晴らしさが楽曲ありきだということもわかるよ。笑っちゃうほど似ているバンドメンバーにも感動した(ボブ ゲルドフも含む)

それでもさ、あのジム ハットンさんの存在が私にはとびきり輝いて見えたよ。メアリーはともあれ、ポールとはどうして付き合っているのか、そもそもなぜ付き合いだしたのかさえわからなかったからこそ(わかると言えばわかるけど、互いに自己憐憫が過ぎて受け入れがたい)、あの夜、ジムと出会えて本当によかった。自分自身を理解して肯定して、だからこそひとにも優しい言葉をかけられるジムと出会えて、本当によかった。

だれにだって特別な存在が必要なんだと思う。メアリーは「あなたは多くのひとに愛されてる」と言ったけど、それだけではきっと足りない。足りないというか「心から信頼できて愛することのできる相手」から愛されることこそを、ひとは願うものなんじゃないかと思う。

「幸せはお金では買えないけどひとにふるまうことならできる」と言ってた、どれだけ売れても家族にさえ受け入れてもらえなかったフレディの孤独をいやすために必要なのは、ジムみたいな存在だったんだと思う。コンサートに行くのは初めてだって極上の笑顔で話すジムみたいなひとだったんだと思う。

だからこそ、できるなら、最後のスタッフロールの場面では「I was born to love you」をかけてほしかったなあ(ジムを思ってつくった歌だそうなので!)

(評価:★4)

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