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[コメント] カッコーの巣の上で(1975/米)

自らの意思で踏み出す一歩の大切さ。
町田

製作者はマイケル・ダグラスは父カーク・ダグラスの持っていた映画化権を譲り受け本作を完成させた。

カーク・ダグラス。

僕はアメリカン・ニューシネマの本当の旗手とはこの人だと思っている。赤狩りで追放されていた脚本家ダルトン・トランボを強引に復帰させた自己の出演作『スパルタカス』と『脱獄』。(『スパルタカス』のほうは未見であるが)そのどちらもが体制からの脱出を謳い上げたものである。『脱獄』は第二次大戦後の新しい社会の中で孤立した昔気質のカウボーイが少年時代への脱出を図る姿を描いたもので、僕の大好きな映画の一つである。ヤンダース大尉氏のコメントにあるとおり「早すぎたニュー・シネマ」の傑作の一つであると思う。体制に叛旗を翻すと同時に、現行の社会、そして無力な自分に対して深い溜息をついているような作品、すなわちニューシネマである。

カッコーの巣の上で』は『カモメのジョナサン』(こちらは神秘主義的な部分もあって今読むと古臭い)などと並ぶ’60年代のヒッピー達の愛読書(読みまわしたことだろう)の一つだそうだ。当時の機運を感じさせる「反体制・自由への脱出・個人の尊重」がそれら共通のテーマである。ダグラスはこの小説を映画化するのに13年も歳月を要したそうだがもしスムーズに映画化されていれば'63年頃、つまり『脱獄』に続く出演作となっていたはずだった。ファンとしては少し残念な気もするが、それでも本作が傑作と成り得たから万事OKということになるのだろうか。

それにしてもジャック・ニコルソン

本作での演技は素晴らしい。「狂人の中に紛れて狂人のふりをする常人の演技」ってのはいったいどーいう人間が出来るのだろう。勿論、脇もそれぞれ素晴らしかった。

そして音楽監督ジャック・ニッチェ

ライ・クーダーやニール・ヤングなどとも所縁のあるワーナーミュージックのハウス・プロデューサー(違ったらゴメン)。後の『スタンド・バイ・ミー』で通好みの選曲と壷をついた弦編曲で観るものを唸らせた音楽人である。今回は、主題曲や院内でのクラシック音楽もさることながら、野外でのカントリー音楽の使い方に職人の意匠を感じた。バスのシーンでの開放感は尋常ではない。

そして監督ミロシュ・フォアマン

僕はこの人が大好きだ。自由な精神と個の尊厳を謳う作風、『ラグタイム』『アマデウス』などで見せつけた音楽への造詣の深さ(これが半端じゃない)に、僕は完全に惚れ込んでしまっているのだ。チェコスロバキア出身ということだがそれでなおさら好きになってしまう「チェコ人贔屓」は僕だけではないはず。

(評価:★4)

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