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[コメント] 七人の侍(1954/日)

もう本当に悔しい!心底悔しいよ私は!
づん

5点を点ける時に重要な事と言えば「面白い」「感動する」「心に響く」「他の人にも薦めたい」「すごい衝撃を受けた」「演出がよい」「カメラワークが素晴らしい」「出演者の演技がすごい」・・・といった色んな要素があって、それのどれか1つでも飛びぬけていれば私は5点つけます。例えばこの『七人の侍』と他の好きな作品を比べて見ます。今作より『東京物語』の方がより心に響いたし、今作より『雨月物語』のカメラワークの方が私は好きだ。三船敏郎の演技だったら変かも知れないけど『羅生門』とか稲垣浩の『宮本武蔵』三部作の方が私は好き。だからと言って「七人の侍」は感動しなかった訳じゃないし、人に薦めたくない訳でもない。カメラワークだって役者の演技だって言うのが恥ずかしくなるくらい当たり前に素晴らしい。むしろ「七人の侍」は5点要素の全てをクリアしているんです。その一つ一つの度合いが上に挙げた作品より少し低かっただけで。高さではこの「七人の侍」より高い部分に置きたい映画は他にも沢山ある。でも面積で見るとこの「七人の侍」以上に大きい部分を占める映画は・・・ないな。

正直な事を言うと、私はこの作品を観てガツンと来なかった。でも自分にとっての黒澤デビューが『隠し砦の三悪人』でなく「七人の侍」だったら…。脳震盪を起こしていたと思う。その衝撃は「隠し砦〜」の比ではなかったと思う。そして完全体"三十郎"すら先に見てしまった今「うおお!黒澤明ってスゲェ!」っていう所を通過しちゃったんです。黒澤明がスゲェのはすでに自分の中で常識の範疇になっちゃってて、本当だったらそこが感動の限界点に達するハズだったんだけど、バカな私は見る順番を誤った。

そして私が女でなく、男だったら…。確実に死んでいたと思う。生涯不動のナンバーワン映画になっていたに違いない。でも悲しい事に私は女としてしかこの作品を鑑賞出来ないんです。何をどう頑張ったって私が侍になれる確率はミジンコほどもないし(男子ならミジンコくらいの確率はあるだろ)、侍魂は絶対に持てないんです。侍に惚れるのが関の山なんです。そしてこの映画はそんなキャピキャピの乙女目線で見るにはあまりに無骨すぎる(『用心棒』や『椿三十郎』は乙女目線でも可)。私は一種の疎外感を感じ、悲しくて悔しくて、生まれて初めて心底男子が羨ましいと思いました。三船に恋する事は出来ても私は三船にはなれないんだぁぁぁっていう絶望?"もしも"なんていうナンセンスな話は好きじゃないけど、もしも生まれ変われるなら、私は男に生まれ変わって腹の底からこの映画を絶賛しまくりたい。そして「あんな生き様がどうの」とか熱くまくし立ててやりたい。でもそれは何をどう頑張っても出来ないから、私は出来るだけ多くの男子にこの映画を薦めます。そしてうおおお!って腹の底から感動で打ち震える男子を見てはらわた煮えくり返りたいと思います。

でもでもでもやっぱり悔しいからこれからも何回も観ると思う。「用心棒」や「椿三十郎」と一緒で、純粋に"観たい"衝動に駆られる不思議な力があるんだもん。正直3時間半見終わったあと、時間さえあれば普通にもう一回最初から観たいと思ったもんね!3時間半あったら未見の映画2本見れるじゃん。なんて全然思わないもんね!それがすでにスゴイ事なんだよ。やっぱりスゴイ映画なんだよ。でも私のスゴイと男子のスゴイでは桁が違うんだよ、本っっ当に悔しい!!!

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08.09.08 記

(評価:★5)

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