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[コメント] カリスマ(1999/日)

圧倒的な、強靭な曖昧さ。
磐井ガクラン

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







桐山の言う通り審判を下さず服従してきた藪池が初めて審判を下さなければならない状況に陥った時、結局「どちらも救えないか」という曖昧な判断により結果的に人質も犯人も殺すことになる。 山に入っても状況は変わらなかった。力の拮抗に対し薮池は「どちら側」か判然としないままにキーマンとなってしまう訳だが、ここでまたも「森もカリスマも生き延びる方法はないのか」という先の判断と同じことを口にする。そしてカリスマを巡る闘争の結果は一旦、風吹洞口姉妹が勝利したかに思えたが、薮池が井戸を壊すことによって、風吹の計画も頓挫、かくして問題はまたもや宙吊りにされる。 そしてここからの薮池の行動は奇妙である。只の大きな枯れ木を彼は再び「カリスマ」として再生させようとする。そして何故か人々はその利も害もない木を巡って闘争を開始するわけだが、薮池はもう何か奇妙な余裕すら生まれている。また「森かカリスマかという問題提起自体が間違っているんだ」と問題そのものを無効化する発言すらする。言わば彼はもう曖昧さこそが明晰というような存在として、ある。桐山が「お前がカリスマだ」というのもあながち間違いではない。善悪の立場に立脚した行動原理とは遥か遠い場所に薮池はいる。問題提起、二律背反を無効化しながらカリスマは只、生き延びるのだ。

(評価:★4)

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