コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] 椿三十郎(1962/日)

この作品はある意味当たり前のことを主張している。映画とは、いかにリアルに作るかではなく、いかに観客を楽しませるかと言う点にある。そんな当たり前のことを、真っ正面からぶつけてくれた。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 痛快娯楽大作。冒頭から物語は小気味よく展開し、ラストまで飽きさせない雰囲気は見事。ただ、小気味が良いと言うことは、その分ストーリー性に複雑さが無くなったと言うこと。若侍達の単純さは見ていて情けない程だし、三十郎の性格も実に単純。あんななりした素浪人があんなに正義感溢れてるなんて、見ていて信じられないとさえ思う。

 とは言え、この作品とにかく凄い。何と言っても三船敏郎が格好良く、最後の決闘シーンは息詰まる緊張感とその後の開放感とのタイミングが実に見事。あの血しぶきの巻き上げ方は、殆どアニメのよう。よくやってくれた。

 あと、やはり黒澤明だけあり、レイアウトの素晴らしさは言うに及ばず。たとえそれがモブシーンであってもきちんと人が配置され、隙がないカメラ・ワークを魅せ付けてくれる。中盤静かに物語が流れるシーンで流れていく椿は目に焼き付き、白黒映画でありながらちゃんと赤く見えるような気さえするのはさすが。黒澤明はとにかく白黒映画を知り尽くしてる。

 椿であれ、血であれ、あれは墨汁で作られてるから白い画面の中で映えてるんだよね。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (9 人)イライザー7[*] 水那岐[*] Carol Anne[*] chokobo[*] すやすや[*] 山本美容室[*] ina sawa:38[*] さいた

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。