たとえそれが一本だけの道だとしても、越えなきゃいけない丘もあるし、時には嵐だってやってくるし、簡単には辿り着けない道。でもそれが１０年の重み、大切な人への愛情の重さ、自分で辿り着かなきゃ意味ないんだよね。

だからこそ迎えられる、感無量のラストシーン。トラクターを見た瞬間に万感の思いで胸を詰まらせるアニキ。「あれに乗ってきたのか？」と、ただ一言。そんな時って簡単な言葉しか出てこないもんなんだよね。でもそんな言葉だからこそ、伝わってくるモノも大きいワケで。

じっちゃんは、娘はトロいのではなくて、人より多くのものに目を向けているだけ、と言う。そんな親子を見ると、別に意識してゆっくり歩いてるワケではなくて、そんな多くのことに目を向けながら過ごしていると、自然とその人の周りの時間はゆっくり流れていくんだろうな、と。そんなじっちゃんにつられて、周りの人間の見送る手もゆっくり振られていたり、話振りもゆったりとしたり。そんな風にしてると、心のカドも削られて丸みを帯びるものなんですね。じっちゃんのクシャクシャの皺は、歳月をかけてじっくりと緩やかに刻まれた年輪みたいデス。

トラクターで、とは言わないけど、何だか学生時代以来久し振りに、青春１８キップで鈍行の旅がしたくなりました。