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[コメント] アカルイミライ(2002/日)

「じれったいんだよ!」
Linus

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画を若者への迎合ととる人もいるらしい。 そうなのだろうか? そうなのかもしれない。 でも、黒沢清の映画の客層は、若者だ。 彼らを否定したら、商売にならない。 一番わかっているのは監督だ。 けど、今の若者たちの姿に疑問を感じる。 それを、どうやって伝えればいいんだ、という 真面目な映画作りに、気持ちが揺さぶられた。

「じれったいんだよ!」

若者に対して、批判めいた言葉は、これだけ。 後は、彼らを否定しない。 ラストにチェ・ゲバラの Tシャツを着させ、高校生(?)を練り歩かせる。

お前らに思想なんかあるのか? 世の中に『アカルイミライ』なんて ありません。まるで、黒沢清の呟きが聞こえてきそう。 監督のシニカルな視線にどぎまぎする。 だって、それは、私の社会に対する視線でもあるから。

「自意識」「自己愛」「自尊心」。

何故、こうも皆、自分のことばっか考えてんだ? 最近、思ったことがある。 「自意識」をコントロールすることが、大人になることなんだって。 コントロールできなけりゃ、ただの子供。(自分を含めて)

サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』を読む。もう3回目だ。 この主人公、世の中の何もかもが嫌いで、小学生の妹に 「けっきょく、世の中のすべてが気に入らないのよ」と諭される。 まるで『アカルイミライ』の主人公たちのよう。 『ライ麦』に影響を受けた、マーク・チャップマンは、 ジョン・レノンを殺した。(事件当時、彼のポケットには『ライ麦』 が入っていたことが、『ライ麦』が売れた理由でもあるとか) でも、それを創作したサリンジャーは、隠遁しちゃったけど、 人は殺してない。彼は、自意識をコントロールしたんだ。 黒沢清だって、たぶん人は殺さないだろう。

人を殺す人は、自意識をコントロールできなかったのです。 自意識に、人はふりまわされるけど、それにのみこまれちゃったら、 犯罪者になってしまうのです。

「じれったいんだよ!」

これは自分に向けられた言葉なのか? 自分が発すべき言葉なのか? 自分の年代は、この映画に出ていなくて、若者世代と親世代に 片足をのっけてるみたいな、なんだかバランスの悪い、 けど、なんだか妙に泣けてくる映画なのでした。(まだまだ青いな私も)

(評価:★4)

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