★3 | 虹の女神(2006/日) | ストーリーテリングではなく雰囲気主体のどうってことない映画だが、その雰囲気作りには見るべきものがある。それを支えているのはジンジャー・ロジャースのような親しみやすく健康的な上野樹里の肉体性と、篠田昇トリビュートともいえる温もりのカメラワーク。自意識希薄でも生気ある市原隼人のキャラもマル。いい役者さんだ。 [review] | [投票] |
★3 | 映画に愛をこめて アメリカの夜(1973/仏=伊) | 撮影所の映画。劇中劇が実際の現場に展開されたような恋愛模様や相次ぐ予想外のトラブルがおもしろく描かれている。集って創りまた離れていく人間たちの不在感は、つまるところ「観客がいない」ということに集約されると思う。だからトリュフォーは少年映画ファンを感傷的に描くのだ。 | [投票(1)] |
★4 | 叫(2006/日) | 『LOFT』に続いて黒沢清二本目。やはりミザンセヌの作家のようだ。アントニオーニほどのきっちりした額縁舞台ではないが、フォルムと色彩と配置による画面設計は、どう撮るかという以上にまず何を撮るかに意識的であり、それがホラーというジャンルと『雨月物語』的物語性にマッチしている。 | [投票(2)] |
★1 | ゆれる(2006/日) | オダギリジョーと真木よう子の夜のドライブはアメリカのインディペンデンス映画みたいだ。だがオダギリが真木の元を去る省略の仕方は考え抜かれたものというより監督の力量不足に思えて仕方がない。 [review] | [投票(1)] |
★3 | マッチポイント(2005/英=米=ルクセンブルク) | 舞台劇翻案スタイルの演出による時間と空間の圧縮、持続する会話でのエモーションの醸成と、英国産ドラマを順当に踏襲しているが、中盤以降のサスペンドとツイストしたエンディングはさしてうまくない。ヨハンソンの雨の麦畑の濡れ場がピークだったかな。 | [投票] |
★2 | 萌の朱雀(1997/日) | 画が汚い、といって悪ければ説明的、言語的。シナリオをただ映像化しただけの極めて退屈な凡作で、映画的創意工夫の痕跡が感じられない。 | [投票] |
★3 | リトル・ロマンス(1979/米) | 人物像は平板だし会話もつまらない。実体験に根ざしたかのようなトリュフォー、コッポラらの青春映画の切なさは皆無だが、ダイアン・レインが実に可愛らしくて幸福な作品に仕上がっている。 | [投票] |
★3 | お嬢さん(1961/日) | 若尾文子の想定内の妄想内容から外れた実際の展開のおもしろさ、これは三島原作にポイント。軽妙スピーディーで、市川崑的「どや?」という衒いがない弓削演出にもポイント。そしてコメディエンヌ風の浅いキャラでどきっとする色気を見せる若尾は言うまでもなく魅力的だ。 | [投票(1)] |
★4 | LOFT ロフト(2005/日) | オープニングで中谷美紀が映った鏡がスチール写真に見えたりとか、中盤で階段を上がる彼女の左腕の影とか、最初から最後まで画面から漂う緊張感が半端ではない。だからこそ芝居がかった台詞回しや俗っぽいサプライズ演出が陳腐ではなく一周回って巧い!となる。この転換こそ映画ならでは。 | [投票(3)] |
★2 | マイアミ・バイス(2006/独=米) | 溶岩流のように真っ赤に燃える街の灯りとか、夜空に浮かぶ紫色の雲といった、デジタルビデオによる粒子の粗い高感度撮影が斬新だ。だが肝心の中身がタコ。潜入捜査も恋も危うい綱渡りのはずなのに、コリン・ファレルのキャラが頭悪すぎて危険な香りがただよってこない。 | [投票] |
★5 | 秀子の車掌さん(1941/日) | 高峰秀子の登場シーンは後ろ姿、まだ幼さの残る顔のショットに先立って、擦れた言い回しの声(「だって、口癖になってんのよ」)を聞かせるところなど、子役ではなく職業女優としての成瀬の期待が伺える。 [review] | [投票(2)] |
★4 | 八月の濡れた砂(1971/日) | 主人公たちが輩どもからオープンカーを奪い取るシーンを見てみよう。村野武範が飛び乗り、手持ちカメラが四人満車の座席を撮って、そのまま180度パンして追いかけてくる連中を捉えている。トランクの上に載ったカメラマン=観客が、五人目の仲間のように感じられる。 [review] | [投票(1)] |
★5 | デス・プルーフ in グラインドハウス(2007/米) | 女性キャストがみな素晴らしい。前半、延々と続く会話劇を見ていると、台詞というものが、ストーリーを進行させるためではなく、キャラクターに血肉を通わせるために機能していることに気付く。だからクライマックスのスタントシーンではガッツリ感情移入してしまった。 [review] | [投票(17)] |
★3 | 伝染歌(2007/日) | 年季の入った映画ファンを虜にする安定した語り口を見せてくれるのだが、そうしたファンが盲目的にスルーしてしまいそうなポジションにこの映画はある。結果、Jホラー目当てで見に来た観客から総スカンを食らってしまうのだ。 [review] | [投票(1)] |
★4 | ベリッシマ(1951/伊) | 庶民的母親という役柄に説得力を持たせつつ、マニャーニがまるで女優を演じる女優であるかのようなバックステージモノとして見た。黒いスーツ姿もキアーリのあしらい方も堂に入っている。アパートの中庭での『赤い河』上映とは、なんと贅沢なことだろう。 [review] | [投票(3)] |
★5 | 疑惑の影(1943/米) | コットンがでているせいか、室内劇の緊迫感がオーソン・ウェルズしている。芝居場にぐいーっと立ち入るドリーの動きは、まるでカメラがもう一人の役者であるかのようだ。 | [投票(2)] |
★5 | 次郎長三国志・次郎長売出す(1952/日) | フォードの『アパッチ砦』の決して理解しあえない対立関係もまた真実なら、喧嘩の調停をする次郎長の相互理解もまた真実。どちらも男の政治として一本筋が通っている。この先一家の顔となる面々の紹介も兼ねたマキノ次郎長ワールドの軽妙なるイントロダクション。 | [投票] |
★3 | ワン・ナイト・スタンド(1997/米) | 万年筆の染み、交通渋滞、暴漢。都市の日常を失わずムードを高めていく演出、とりわけスナイプスがタクシーを降りてから弦楽四重奏を経てバーに至る繋ぎが巧い。やたら挑発的なミン・ナ・ウェンにもそそられる。死者が引き寄せる奇妙な縁がラストで生かしきれていないのは残念。 | [投票] |
★4 | トランスフォーマー(2007/米) | 見た目が内容であり、内容は見た目である、と。ロボットの人格造形は低年齢向けとして割り切るとして、よかったのはシア・ラブーフだ。ミーガン・フォックスと80年代青春ドラマしていた前半は特に。 [review] | [投票(6)] |
★3 | エリ・エリ・レマ・サバクタニ(2005/日) | 生音を収集しノイズミュージックを作り上げる行程は、ドキュメンタリー映画に似ている。対象にカメラを向けた時点で作家の主観(作家性)が生まれるように、ホースを振り回すというアイディアが浮かんだ瞬間にそれは「音」から「音楽」になる(たとえそれがノイズであっても)。 [review] | [投票] |