★4 | スタンドオフ(2016/カナダ) | 冒頭からアメリカ国旗が映りいかにも西部劇的なカットが見られるこの映画がカナダ映画であるというややこしさ。銃撃戦の本質とはいかに相手の視線から逃れ相手を自らの視界に収めるかということであり銃弾の量や曲芸的な動きは必要ではないということを端的に示している。 | [投票] |
★4 | 神々のふるさと・出雲神楽(2002/日) | 脱いだ靴、儀式そっちのけで酒を飲む人々、仮面を被る時の表情、あくびをする子ども、この映画には単に伝統行事を記録することが目的ならばノイズにしかならないはずの行事に関わる人々の様々な表情が映されている。伝統という「過去」だけではなく「今」を捉えようとしているからこそ、映画は生き生きとしているし、確かに面白くなるのだ。 | [投票(1)] |
★4 | クランプス 魔物の儀式(2015/米) | ジョージ・A・ロメロやジョー・ダンテ的記憶がにじみ出ている。わずかな視線や仕草で人物の関係を示す、音や光に対する感覚、空間や小道具を生かしたアクションもちゃんと撮れている。ファミリー層を意識したためある程度のヌルさは致し方ないだろうが終盤の雑さは気になる。だがこの監督の次回作は期待できる。少なくとも庵野秀明やギャレス・エドワーズよりはずっといい仕事をするだろう。 | [投票] |
★3 | グリーン・インフェルノ(2013/米=チリ=カナダ) | 銃というアイテムは恐怖に対して容易に反撃できる手段であり、多くのホラー映画においてそれを劇中に持ち込むことは忌避されている。しかしイーライ・ロスの作品には現在まですべての監督作において銃が登場しており、このことから見ても本来この人の資質はアクション映画向きなのだと思う。ホラーというジャンルにこだわり続ける限りこの監督の真価が発揮される時は訪れないだろう。 | [投票] |
★4 | 宇宙へのフロンティア(1989/米) | まず何よりこれはオープンセットの自然光により宇宙空間や月面を撮影した映像が使われているという点で他の宇宙SF映画の追随を許さないだろう。この光と影のコントラストを特撮やセットで表現することができた作品は未だ一つとして見たことがない。とても記録のために撮られたとは思えない劇映画のような演出とカメラワークがここにあることにただただ驚く他ない、無論それは編集の際に映像の取捨選択があってこそだろうが。 | [投票] |
★3 | ラ・ラ・ランド(2016/米) | やはり歌唱シーンではA Lovely Nightが最も優れており、ここはあのLAの夜景が見える丘のロケーションを選べた時点でもう勝ちだったと思う。そうした歌唱シーン幻想シーンには評価すべきところもあるのだが、ドラマ部分の演出が平凡というか力押しなところがありどうにも退屈である。なんというかミュージカル映画というジャンルにおける『シン・ゴジラ』みたいな作品だなと。 [review] | [投票(8)] |
★3 | マリアンヌ(2016/米) | クラシカルな佇まいと誰もが口にしたくなるような作品だが、映画におけるクラシカルとは具体的には30〜50年代あたりの作品群に似ていることを指すのだとしたら、そうした記述を迷わせる部分がこの映画にはある。それはカラーであることでもCGを用いることでもなく、シネスコでありスタンダードの1.33:1の比率の画面を採用していないことである。 [review] | [投票] |
★4 | 7月4日に生まれて(1989/米) | 『プラトーン』に懲りてこの映画を見落とさなかったのは幸運であった。まず何よりトム・クルーズがいいし、序盤の戦闘におけるロケーションがありがちなジャングルではなく砂浜や開けた原っぱのような西部劇的な空間であるのも良い。メキシコへの逃避行、ラストは"home"に帰り終わる、これはベトナム戦争の映画である前にどこまでもアメリカの映画であり、それ故に素晴らしい。 | [投票] |
★4 | デスノート Light up the NEW world(2016/日) | 佐藤信介もようやくメジャー映画で傑作をものにしてくれた。『LOVE SONG』以来15年ぶり。『シン・ゴジラ』がついぞ獲得しえなかった東京の空撮の豊かさ、会議シーンの空間的面白さ。頭脳戦という映像映えしない要素はばっさり切り捨て、視線によるサスペンスとノートにペンを滑らすアクションで魅せるのは映画として極めて正しい選択である。 | [投票] |
★2 | ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー(2016/米) | ギャレス・エドワーズという人にはもう少し期待していただけに失望した。相変わらずカメラが引いてる時はそれなりに冴えているのにカメラが寄ると途端にダメになる。根本的に人間に興味がない監督なのに感傷的な親子のドラマを撮るもんだから見てられない。『ゴジラ』は人間がただの脇役であったから幾分かマシだったのだ。ドニー・イェンは異様な存在感を放つがそれは明らかに本人の人徳の成せるわざである。 | [投票(2)] |
★3 | レッドタートル ある島の物語(2016/日=仏=ベルギー) | 台詞を排し動きの力だけで最後まで見せる、誠実な作品ではあるし十分面白くもあるのだが、これをサイレント映画的というのは少し違うと思う。サイレント映画の登場人物は無口ではなく普通に喋っている、重要なのはその内容が観客にすべて伝わる必要がないという点である。音楽は大げさで感情を誘導しようとする意図が露骨で興ざめ、地味でアーティスティックではなく派手でハリウッド的な部分が不満。蟹さん萌え映画としては優秀。 [review] | [投票] |
★3 | キング・オブ・エジプト(2016/米=豪) | 製作にも名を連ねているあたりプロデューサーによる押し付け企画ではなくアレックス・プロヤスはどうやら好き好んでこの題材を手掛けたようでそのため50年代史劇に見られるような鈍重さはここにはなく快活なアクション映画に仕上がっている。CGの多用はゲームムービー一歩手前でギリギリ映画の側に踏み留まっている。『ジョン・カーター』のように平凡ではあるが素晴らしい、という評が適切か。 | [投票] |
★4 | スーサイド・スクワッド(2016/米) | 傑作。こういうジャンルだとデビッド・エイヤーもリアリズムに拘泥することなく職人的な演出で楽しませてくれるようだ。回想は説明ではなくそれ自体が魅力的なアクションシーンだから停滞しない、と自信を持って言い切れないのが辛いところだが。閉じた扉は開き開いた扉は閉じる、人物は落ちるために高く上る、眼鏡は外すためにかけられる、メイクは崩すために施される。アクションもちゃんと見せる順番と流れがある。 [review] | [投票] |
★3 | 続 夕陽のガンマン 地獄の決斗(1966/伊) | セルジオ・レオーネの映画では一番つまらない、というのは言い過ぎで『ロード島の要塞』よりは面白い。基本的に単純な娯楽アクションとして作られているためか後の三作とは異なり上映時間の長さは必ずしも映画の豊穣さに繋がっているとはいえず、冗長なだけではないのか。 [review] | [投票(3)] |
★4 | ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発(2008/日) | 冗談抜きでよくできてる。確かに物語やアイデアはふざけているかもしれないが河崎実の演出や画面造形は職人的と言っていいほど真面目でオーソドックスであり、夕日をバックに踊るギララやタケ魔人を祀る部屋に射し込む光などはおよそ似つかわしくない詩情すら感じさせる。誠実な脚本と十分な製作費さえ約束できるならこの監督にゴジラを撮らせても全く問題はない。 | [投票] |
★3 | SCOOP!(2016/日) | 長回しからカメラが上昇しタイトルインするオープニングのかっこよさ。カーチェイスの造形も近年の日本映画では屈指の出来栄えだろう。そうした魅力的な細部があるだけに、結局福山雅治のナルシシズム的かっこつけ映画に留まってしまったのが残念である。中年パパラッチ、ゴキブリ、ドブネズミと卑下しながら冷徹に突き放し切れていない、ただの言い訳でしかない。 [review] | [投票(3)] |
★3 | BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016/米) | 近年のスティーヴン・スピルバーグ作品の中では一番楽しめたし、やはりこの人のサスペンス演出、映画的感性は凡百の監督とは一線を画しているとは思いつつ、それでもこれでは寂しいというかこの程度ならできて当然だろうという感じである。正直途中で飽きた。 [review] | [投票] |
★3 | シン・ゴジラ(2016/日) | こういう規模の企画を一本の映画としてまとめ上げ、なおかつ興行的にも成功させる、庵野秀明という人は映画監督である前に一流の映画プロデューサーなのだろう。この映画最大の不幸は田中友幸と円谷英二に当たる人物はいても本多猪四郎が不在という点である。いびつな映画だが『真昼の決闘』を見た人間が『リオ・ブラボー』を作ったような事態が起きることを期待し、この映画の成功自体は大いに歓迎する。 [review] | [投票(12)] |
★4 | ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃(1969/日) | 演出・編集・美術・照明どれをとってもハイレベルな映画で冗談では作れない。怪獣が夢の中にしか出てこず組織や大局ではなく個人の物語を描くこの映画がシリーズの中で一番「まともな」映画であることもまた事実である。だが認めるわけにはいかない。この映画をシリーズの最高傑作に位置づけることはもう怪獣映画など作らない方が良いと宣言するに等しいからである。 | [投票] |
★4 | 宇宙大戦争(1959/日) | 再評価されるべき一本。会議シーンの正しい撮り方の一例がここにある。現実に存在しないものを描くため多くのSF映画において宇宙船や架空兵器の操縦・運用はうやむやにして省略される傾向があるのだが、この映画はその過程を丹念に描写しそれが小気味よいアクションを生んでいる。ここでは科学的・工学的リアリティがそのまま映画の魅力につながっている、つなげるだけの演出・編集・特撮・カメラワークがある。 | [投票] |