★4 | 乱れる(1964/日) | これぞメロドラマの様式美。過去と結婚したかのようなヒロイン。真綿で絞められるようなその敗北。クレシェンドで高まる情感。そして、中空に凍りつく結末。成瀬の職人技の冴えを見た。 | [投票(2)] |
★5 | 羅生門(1950/日) | 廃墟に降り注ぐ終末的豪雨。刃のように網膜に閃く太陽。暗い森に翻る女の衣の白さ。終戦五年目のエゴと獣性剥き出しの世相が平安期に転生する。日本最高のシュールレアリスム映画。 | [投票(2)] |
★4 | ジュリア(1977/米) | いい加減には生きられない激しい気性の人々。孤独の高貴、内的対話の豊穣、創造の苦痛と栄光、そして、馴れ合わず独り我が道をゆく者の間にある深い絆。火酒のように澄んでキツい。 | [投票(2)] |
★4 | ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習(2006/米) | 自由を求めて戦い敗れていった『イージー・ライダー』から三十数年。生粋の田舎者(偽物だが)がゆく超田舎者大国・アメリカ紀行。あり余る悪意と品位の無さが光るロードムービー。 [review] | [投票(2)] |
★3 | めし(1951/日) | 成瀬らしい憂鬱なホームドラマ。色でいえばグレーなのだが、不思議にカラフルな印象。様々なグレーの微妙な描き分けと、それらの巧みな組み合わせによる階調こそ、成瀬の魅力。 | [投票(2)] |
★4 | 用心棒(1961/日) | 戦後の日本映画には数少ない格好よさ。荒々しい山並み、からっ風、舞い上がる関東ローム層の砂塵…これは関西では作れない。ここにカラフルなヒロインがいれば完璧だったのだが。 | [投票(2)] |
★5 | 驟雨(1956/日) | まだ郊外だった頃の世田谷。夕暮れには帰路について、妻と肩を並べて歩く勤め人達。通り雨の後、土の香りが漂う泥濘道。今は失われた世界の美しさを惜しまずにはいられない。 | [投票(2)] |
★5 | 浮草(1959/日) | 旅回り一座のゆるーい雰囲気。そこで展開される人間模様。好色と嫉妬、狡猾と悲哀、純情と媚態。赤と緑を効果的に配した色彩設計…すべてが響き合って絶妙。まるで音楽のようだ。 | [投票(2)] |
★4 | 草の上の昼食(1959/仏) | 青い空に白い飛行機。木々や下生えの濃く淡い緑。陽だまりの金や茶。木陰の紫と濃紺。メタリックグレーのスポーツカー。そして、翻る赤いスカート。この色彩美だけでも観る価値はある。 | [投票(2)] |
★5 | 山の音(1954/日) | まったく興奮しない語り口で非情なドラマが語られる。事実のごく一部しか描かれないことが、この映画に氷のような美しさを与えている。が、水面下では激しい葛藤が渦巻いている― [review] | [投票(2)] |
★4 | ゴジラ(1954/日) | 敗戦国は自らの歴史を書く権利を失う。しかし、代わりに物凄いホラー怪獣映画を作る能力は与えられる。誰もが直視し難い破壊のトラウマはフィクションに昇華される他ないのだから。 | [投票(2)] |
★4 | 妹(1974/日) | 兄は妹を子供だと思っているが、妹は兄の知らない激しい愛憎のなかにいる。子供じみた仕草に垣間見える自棄と厭世が切ない。貧乏と繁栄が同居する70年代の風俗模様も楽しい。 | [投票(2)] |
★5 | 幕末太陽傳(1957/日) | 冒頭、現在(昭和32年)の品川のシケた景色が映し出され、すべては茶番に終わることが暗示される。そして繰り広げられる馬鹿騒ぎ…。終幕を迎えた「江戸」への惜別の宴― [review] | [投票(2)] |
★5 | 甘い生活(1960/伊=仏) | 大衆はメディアの扇動に踊り、上流階級は退廃に沈む。そしてマルチェッロはとどかない夢にただ苛立つ。神なき繁栄。茶番の日々。バブル時代、私は学生でしたがまさにこんな感じでした。 | [投票(2)] |
★3 | 君の名は 第三部(1954/日) | いい加減にしろと言いたくなってきたあたりで大団円。最後は真知子を応援しない人があるだろうか。俗悪ではある。しかしメロドラマの威力を感じたのも確か。つねに最弱者の女性の側に立とうとしていることは褒めなければならない。〆めのセリフも利いている。 [review] | [投票(1)] |
★4 | 天使の復讐(1981/米) | たぶん喜劇。『悪魔の毒々モンスター』姉妹編だと思う。自由放任のあげくバケモノ屋敷と化したNYを断罪しているのか、あるいは、こういう形での求愛なのかもしれない。一瞬映る街の夜景が美しく、あの大都会に巣くう救いようのない孤独が鮮やかに浮びあがる。 [review] | [投票(1)] |
★3 | 馬(1941/日) | カラーで観たかった(とくに初夏の野外ロケ)。ゆったりした低音部のある音楽を思わせる力強さ。藁と土のにおい。新旧入れ替わる命の厳粛。デコちゃんは野性味があっていいと思うが、真の主人公は東北の風土だろう。散見されるクドい演出に黒澤の影を感じた。 | [投票(1)] |
★4 | 1/880000の孤独(1977/日) | 不適格に生まれついた者の悲哀が胸をつく悲惨な話なのに、なんだか笑ってしまう。「ボロアパート鬱屈系」はこの頃の流行だが、青春ものに回収しなかったのは正解。70年代後半の東京についての優れたスケッチにもなっている。塚本晋也『鉄男』の前駆体だろう。 | [投票(1)] |
★4 | むかしの歌(1939/日) | いかにも関西の映画らしい。セリフの掛け合い。滅びゆく旧文化。昔の商家(手摺りのない階段)や運河での荷揚げ(ロケ地はどこ?)など、細部もいい。『花ちりぬ』もそうだが、この監督の撮るものには繊細さ(繊細過ぎる感も有)と気品がある。花井蘭子も◎。 | [投票(1)] |
★4 | どん底(1936/仏) | 『人情紙風船』がほぼ同時に作られている。ギャバンはワルで抜け目なく、しかしロマンチックでもある奴で、ジョン・レノンが『ワーキングクラス・ヒーロー』を唄う何十年も前に既にそれをやっている。結末で二人のゆく道は『大いなる幻影』に真っすぐ続く。 [review] | [投票(1)] |