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[コメント] 殺人の追憶(2003/韓国)

やっぱり「跳び蹴り」というのが断然面白い。跳び蹴りとは躊躇いを抱えたままであったり「つい、うっかり」といったもののはずみでは決して繰り出せない類の、つまり相手を傷つけるという確固たる意思に基づく暴力である。そんなものがさも当然のごとく唐突に飛び交ってしまうのが『殺人の追憶』の世界なのだ。
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**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







このようなバディ・ムーヴィ的設定であればソン・ガンホキム・サンギョンの対立なり同化なりに興味を絞って語りがちになるところを、暴力刑事キム・レハ、課長ソン・ジュホ、紅一点コ・ソヒを描き分け、彼らを適宜出し入れすることで小チームの物語にしているところがよい。エピローグでは現在のガンホの姿が描かれるが、サンギョンは、レハは、ジュホは、コヒは、今どうしているのだろうと想像を掻き立てられる。事件および捜査の失敗は、やはり彼らの人生も決定的に変えてしまったはずだろうと。

土着的な描写に関しては、もちろんその巧みさは認めざるをえないにしても、私には厭らしさが先に立って感心しない。むしろポン・ジュノにあって特筆すべきは、ゴミ処理場・採石場・工場といった広大な非-人間的空間をロングで切り取る能力とセンスだろう。地下に設けられた取調室の廃墟感もいい。ともあれ、これだけ手間暇をかけて撮ることが許されている日本映画が今どれほどあるだろうかと、いまだに羨望の対象となる作品ではある。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (7 人)死ぬまでシネマ[*] 緑雨[*] FreeSize[*] おーい粗茶[*] chokobo[*] ジョー・チップ[*] けにろん[*]

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