国家の歯車、名も無き一兵士となって殺し合いをさせられるのはどこの兵隊でも同じだろう。それに国家目的や下手な正義を吹き込んで、自分を納得させる為にも兵士たち自身がそんな実体のないものと「一体化」させられる事こそ、何よりも彼らを「奪う」事ではないのか。制作者や韓国の観客がどう思ったかは判らないけれど、この映画を観て私はそう思う。

散々彼らを弄んで裏切ったのは韓国政府である。彼らが異議申し立てをする為には、向かうのは平壌ではなく青瓦台でなければならないのは自明だろう。最初生き残る為に平壌を目指した彼らが、今度は逃げる事より死を選んだのだ。これは国家から自分を取り戻す為である。