コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] パッチギ!(2004/日)

若さではパッチギれない歴史があり、若さしかパッチギれない壁がある。現実に直面したティーンは「悲しくてやりきれず」「悲しみは言葉にならない」からギターを壊し、自暴自棄になる。でも誰が作ったかわからない歴史に引き裂かれた今、叫んでやる。「あの素晴らしい愛をもう一度」 2005年1月29日、31日、2月16日18日劇場鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「ダッセー!つーか手前らの世代でケリ付けろよ。おめぇら一世や二世がぐずぐずしてっから俺らがパッとしねぇんだろ。」(by 窪塚 from 『GO』)

本作の答えとして位置している作品が『GO』なのではないかと常々思う。コメントに書いたのは窪塚がタクシーの車内で北朝鮮に帰国した弟の不幸を聞いて泣いている時に言った言葉。

正直言ってね、残酷で非道な言い方かもしれないけど、俺達現代ティーンにとっては、生馬トンネルを誰が掘ろうと、国会議事堂の石を誰が積み上げようと、ヤクザにど突かれて脚が曲がっていようと、知った事じゃないし、それを日本人が無理矢理やらせていようと、そんな事もどうでもいい。

だってそうじゃないか。そんな下らない歴史だか文化だか伝統だか国境だか国籍だか、そんな訳の分からない誰が作ったわからない仕切りに分けられて、人が必要とする大切な物を失う、それがどれだけ苦しい事か。

「お前ら日本のガキ、何知ってる?」という痛烈な言葉。

確かに俺達は何も知らない。表面的な小奇麗な歴史を学んでぬくぬくとこの社会で生きてきた。そんな俺達が苦労して生き延びてきた方々に非難される事は十分理解出来る。でも、少なくとも俺達ティーンにとっては、そんな誰が作ったんだか分からない歴史なんかよりも、目の前の友達と仲良くする事が一番大切なんだよ。

それを朝鮮も日本も関係ねぇ大人に引き裂かれる。過去の日本人がした蛮行と、ソレに伴う朝鮮人の方々の怒り。それらは永遠に増幅され続けるのかもしれない。でも、それ以上に、純粋な国際交流がなされていると言うのに、それなのに大人がそれを邪魔する。歴史が、国境が、文化が、国籍がそれを邪魔する。

それらを全て一直線に並べて、そこからスタートする事は不可能かもしれない。でも、それは大人同士の問題だろ。子供同士の友情に政治や国家レベルの問題を持ち込んで引き裂く貴様らの神経が知れない。

「何、生意気にビール飲んでんだよ。親のスネかじってる間は韓国も朝鮮も日本も関係ないのよ。ガキなんだよ、ガキ」

GO』の台詞。良くも悪くも、俺達はガキなんだよ。歴史に振り回され、大人の作った文化に振り回され、何が正しいのかすら良く見えないガキなんだ。そいつらに本当の現実を教えるのは必要な事かもしれないが、歴史や国籍や国境線が、人と人とを引き裂く為に存在するのだとすれば、お前らの自慢の社会主義でどうにかしてみろよ。

日本も朝鮮も知らねぇよ、俺ぁ。そんなハナクソみたいな単位に拘るつもりは、少なくとも今は無い。今は政治も歴史も糞も関係ないガキとして、生きていたい。

そして、若さがあるから、元気があるから、超えられる壁だってあるはずだ。

本作を「片方が徹底的に譲歩するだけの友情」と貶した批評家が居た。そんなナンセンスな言い方やめようぜ。大体、彼は譲歩しているのではなくて、韓国も朝鮮も日本も、国籍だの国家も関係なく、一人の女の子を好きになったから、その子やその子の家族に気に入られようとしているだけじゃないか。

そこに民族も宗教も歴史も伝統も国籍も超えた、有るべき姿が存在するのではないだろうか。そして、それがこの映画のスタイルだろ。

ラジオのディレクターが「イムジン河」について口論になった時、「歌っちゃいけねぇ歌なんてある訳無いんだ!この銀河系のどこ探してもなぁ、そんな歌ぁねぇんだよ!」だの「表現の自由だ!」と謳っていた。僕らはオダギリジョーが捜し求めていた自由を生きている。若さ、と言う流れにのって。

やがてその流れは尽きて頭がちがちの大人になっちまうかもしれねぇけど、今は出来るはずなんだ。

現在18歳の俺ですら、さすがに日本人が殴られるシーンは、それなりに憤り、とまで行かずとも、それに近い物を感じた。でも、そんな物に固執してては何も前に進まない事くらい、誰が見ても分かる事じゃないか。

ま、映画が面白いか面白くなかったかは、見る人次第だけどさ。

主義や主張は後回しにしようぜ。そんな物歩み寄ってからでも固執出来るだろ。そんな下らないフィルター通してしか世界見れないなんて悲しすぎるぜ。

そして、それを純粋に出来るのが俺達じゃねーか。立ち上がれ、世界中のティーンよ!うおおお!

世界は俺達の物だ!大人たちの物でもある。でも、結局は俺達の物なんだ!

パッチギろうぜ、その下らねぇ壁。

個人的にツボだったのが極端にデフォルメされた(もしかして、当時ではあれがマジ?)日本人の背の高い「ABCD包囲網」の彼。かなりウケた。

中盤、少々話が広がりすぎの感もあったけど、きちんとクライマックスで全てをまとめているのは見事としか言いようが無い。フォークルの音楽もぴたっとハマって、凄く良い雰囲気を作り出している。

主人公の家が寺、と言うのも何か因縁めいているいなぁ。この辺りも狙っているのかな。それとも原作に忠実に作った結果なのかな。

何より、コレだけの作品を作り上げた製作者一同の勇気に、最大の賛辞を贈りたい。

(評価:★5)

投票

このコメントを気に入った人達 (11 人)aisha[*] おーい粗茶[*] うちわ きわ[*] ホッチkiss あちこ[*] 山本美容室[*] ちわわ[*] シーチキン[*] ぽんた[*] ぽんしゅう[*]

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。