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[コメント] 生きる(1952/日)

「親捨て」と「千客万来」。生きること=人生とは切ない。
いくけん

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







●「生きがい」云々より、「親子の断絶」のテーマが重く感じられた。「光男、光男、光男、光男」。志村喬の切実な声。私は、光男足りえているか。小津の『東京物語』も「親捨て」がテーマ。人にとって永遠の課題。

●省略の妙の極みの橋本/小国/黒澤脚本!

レントゲン→死の予兆/役所→たらい回し!/(黒澤映画に珍しい美人看護婦→凄く冷たい性格 笑!)/メフィストテレスの登場→歓楽(地獄)の行脚/生きる意味の発見→ハッピィ・バースディの祝福/再生の意気込みの顔→お通夜の写真(いい顔している!)なかなか発想できない凄い脚本(ホン)。凄いテンポ。

●飲み屋での場面(人生という名の木枯らしが吹いている。)

メフィストテレス然とした伊藤雄之助(深みを湛えた目)と出会う志村喬。背景の鮮やかな暖簾(のれん)、「千客万来」の文字に痺れた。来る人、去る人、そして出会うことの僥倖(ぎょうこう)。人生のはかなさと、いくばくかの華やかさ。そんな全てを、このシーンに感じた。

●雪のブランコの場面

ブランコに揺られる志村喬。切なさと満足感が胸に去来する。大きく見開いた目。しかし、涙は溢れない。間断と、そして、はらはらと舞い降りる雪たち。奇跡のように美しい。無条件に美しい。黒澤の主人公の人生、そして志村喬の熱演に対する花束。白く大きな花束。

あと、余談だけど、最後のお通夜のシークエンスの群集の扱いが抜群に巧い。10名余りのキャラが、あの狭い空間、限られた時間で、それぞれが立っている!名匠ロバート・アルトマンよりも桁違いに巧い。(名前出してスマン。こやつも好きだよ。)よっ、黒澤、世界一!

(評価:★5)

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