[コメント] 蜘蛛巣城(1957/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
いくつか感じたことを書かせてもらいます。
●冒頭、魔女に出会うシーンで老婆が糸車を回していたシーン、あれは後ろで糸を引いている(=黒幕)ことを暗示したお遊びか。
●その後、三船敏郎と千秋実が霧の中を右往左往するシーン。あそこは最初観賞したとき無駄なシーンかとも思ったけど、再度観てみると、老婆の一言で揺れ動く彼らの心の心境を示していたようにも感じられる。
●マクベス夫人の造形に一番焦点を当てているところが面白い。ちょっとやりすぎの感もあるが、彼女の描き方を見ると、意図的にこの世のものではない描き方、つまり、マクベス夫人の入れ知恵=(否定したいのに否定できない)マクベスの欲望が生み出した産物のような描き方をしている。マクベスは妻にそそのかされたのではなく、内なる欲求を正当化するために妻を利用したと監督は解釈しているのではないかと思えた。
●ローレンス・オリヴィエ版『ハムレット』などで見受けられる、心情をモノローグで綴ってしまう手法を放棄し、ダイアローグに比重を置いた点。夫人に重点を置いたのもその理由からだろう。(なぜならモノローグだと話し相手は必要ないが、ダイアローグだと話し相手が必要になるから)
●タイトルも暗示的。蜘蛛巣城の主→蜘蛛の巣(=欲望)に捕らえられた獲物という解釈でいいの?
●思えばマクベスとオセロは女性に対する接し方が正反対。前者は妻にそそのかされ、後者は妻の言うことに耳を貸さず。両者の共通点は社会的な地位にありながら利口になれない男の物語。ちなみにどちらもアクションより心理的な葛藤の面白さが好み。それでも最後のアクションシーンは臨場感たっぷり。矢が一本ずつ、それが束になって向かってくるシーンの迫力と三船の形相は凄すぎる!
▲気になった点。
▲多くの方が仰られているように台詞が聞き取りにくすぎる。まあ、元ネタを知っているのが救いですが…。
▲それともうひとつ、三船敏郎が老婆の一言で苦悩するとは思えず、このときばかりはミス・キャストな気も。『シャイニング』のジャック・ニコルソン並みに最初ッから行っちゃってるオーラ全開だし。じゃあ誰が良いかって言われてさっと思いつくのも森雅之ぐらいしか思いつかないし、彼だとラスト・シーンの迫力は出ないとは思うので、痛し痒しな点ですが。
この二点が少し勿体無い気がします…贅沢過ぎるか。
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