[コメント] グエムル 漢江の怪物(2006/韓国)
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尻尾出した犯人をみすみす取り逃がす、というこの監督固有の主題。『ほえる犬は噛まない』(のイ・ソンジェの助教授)から始めて『殺人の追憶』も『母なる証明』もそうだった。このユニークなテーマになぜ監督はこだわるのか。本作はこの主題の由来と不可避性をネタ出ししている。尻尾出している犯人とはアメリカなんだと。
尻尾出す在韓米軍。冒頭のホルムアルデヒドの訳判らん不法投棄からはじめてウィルス患者捏造、町中への解毒薬散布に至るまで、その所業は漫画的に間抜けであり、本作はこれを全編で揶揄い続ける。しかし捕まえられない。捕まえることは禁じられている。怪獣もまたアメリカの手落ちで産まれたある意味ゴジラ系の被害者であるからして、山場の怪獣退治にカタルシスは何もなく、皮肉なラストへと繋がる。
この煮え切らなさにリアルが込められている。アメリカをやっつけるのは韓国リベラルの歴史的に正当化された性。アメリカが尻尾振って、悔しかったら捕まえてみろと云っているのに追及し切れない現状への自嘲が伝わってくる。
娯楽大作の皮被っているが何も愉しくない寓話である。寓意であるからして、作劇は他にあげた三作のリアリズムとは別のところにあり、この監督の得手は後者に違いなく、本作の皮肉と悲劇の絡み合いは才気走り過ぎて空回りしているところがある。しかし思いは充分伝わってくる。
「荒らしってのは貧乏人の特権なんだ」と金銭は盗まない兄弟が本邦50年代映画を想起させて美しく、ピョン・ヒボンの変な爺さんも相変わらず強烈。しかしドゥナ嬢が刺身のつまなのは大いに詰まらん。
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