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[コメント] トランスフォーマー(2007/米)

子供が見るには物語が複雑すぎるし、大人が見るには演出が幼稚すぎる。映像が一級品でも、主役不在では老若男女どんな観客も入り込めないだろう…。(2007.08.13.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 この映画が、子供向けの映画だったとしたら・・・

車や飛行機、戦車からトランスフォームしたロボットが大迫力で戦うという設定。戦隊モノの合体ロボが大好きだった自らの子供の頃から考えても、これは本当に魅力的だと思う。だから、そのロボットがかつてないほどの大迫力でバトルを繰り広げるだけでも楽しめる映画であるはずだが、子供をターゲットにするにはあまりにも不親切な作りだった。物語も、アクションも。

子供も楽しめる娯楽作ならば、まずは主役が生きなくてどうするのだ! サムとトランスフォーマーの友情と、それを守るための戦いを主軸にすれば、わかりやすくて良いのだ。国防総省が冒頭から話に入ってくるおかげで話がややこしくなり、善ロボット対悪ロボットの対決をクライマックスにおきつつも、どうしても地球の危機を演出したいらしく、人間を絡ませる。生かすべき主役を生かさないのに、規模の大きさだけを強調するために要素を追加しても、脚本は無意味に複雑化するだけで、娯楽作として親切とは言えないのだ。

アクションも、迫力があれば良いという問題ではない。子供が見た場合、「かっこいい」と思う場面もたくさんあるとは思うが、最終的には疲れてしまうだろう。物語の設定も不必要に難しい上、肝心のトランスフォーマーの戦いも、どこをメインに見たら良いのか定めにくいのだ。『スパイダーマン』だったら、スパイダーマン=主役を中心にアクションを見れば良い。主役不在のこの映画は、スピーディなアクション映像を見続けるだけになってしまった。演出にメリハリがない。早ければ良いという問題ではないのだ。

「印象的なシーンは?」と尋ねれられた、「車がトランスフォームするところ!」と答えられるが、そんな場面はたくさんあるのだ。印象的だと特定できる、キメのシーンが演出上用意されていない。結局、子供にとって、この映画は「かっこいい!」よりも、「よくわかんなかった…」映画になってしまっている気がする。

 では、この映画が、大人向けの映画だったとしたら・・・

冒頭のシーンから露骨だが、コテコテの演出を何とか出来なかったものか。それは、監督がマイケル・ベイだから仕方のないことだが、どんなに迫力のあるアクションを映像で見せられたとしても、ありきたりな音楽の使い方、リアリティーを削ぐ俳優のオーバーアクションなど、根本的な部分で真面目に観ることを放棄させてはいけないだろう。スピルバーグが自らメガホンを取れば、もっと緻密な演出をしたはずなのだが…。とにかく、演出が粗い。その上、前に述べたとおり主役不在という脚本の粗さがあるのだから、質が高くなるはずがない。

かと言って、スピルバーグが絡むと、B級にまで成り下がらないのがある意味では困ったもの。序盤は、人間対トランスフォーマーの戦いに見えたが、どうやらトランスフォーマー対トランスフォーマーの戦いであることが中盤でわかる。これは要するに、この映画に人間は不要だということを意味するトンでもない展開であり、その後のトランスフォーマーのコミカルさを考えると、もっともっと笑えたはずだった。しかし、映像だけは超一級品のため、中途半端に笑い飛ばすことも出来なくなってしまい、なんだか楽しみを削がれた気がした。

 結局のところ、誰に向けた映画なのか、ということだ。どの視点で見るにしろ、欠陥があり、中途半端な映画になってしまっている。それでは、エンタテインメントとして上質とは言えないのだ。

(評価:★2)

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