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[コメント] エイリアン(1979/米)

「どうした、そんなに不味いか?」…こいつら、一体何食ってるんだ?<ちょっと加筆>
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作はリドリー・スコットの出世作であり、彼の知名度を一気に上げた作品でもある(ついでにシガーニー・ウィーバーも)。何せこれは凄い。ゴシック・ホラーの王道を宇宙でやってしまうという奇抜な発想も良いし(以降似たような路線が山ほど出たのはご愛敬)、殆ど登場しないながら、エイリアンのデザインが又秀逸。

 特に前半部分では何気ない宇宙船の日常生活が描かれ、トラブルがあったものの、普通に食事をしているところも結構良し。ところが、そこからが本当の恐怖だった。小学生当時、テレビで見ていて、このシーン以降は見られなかった。更に食事の度に腹をさすったりしてたし(笑)

 この映画の最大の良さは、奇抜な発想でもエイリアンのデザインでもない。あくまで基本に忠実に作られたホラーが一番怖いのだ。と言うことをしっかり認識させたことにある。だからエイリアンは基本的に影から姿を現さず、見えない恐怖に脅えるキャラクター達の方が主となり、それが感情移入を容易にさせている。それが最後のカタストロフを最も効果的に魅せる方法ともなった。そして、リドリー=スコットの絶妙なカメラ・ワークも良し。この作品で監督は水の効果的な使い方を披露している。濡れた通路はスパーク光や壁の発光体の微妙な光を照らし、それに照らされたキャラクターの姿は幻想的でさえある。しかもそれをあおりを多用して描くことで、画面に奥行きと、一体どこから何が出るのか分からない複雑な迷路を思わせる造り。これこそ見事な「怖さ」の演出だ。

 ちなみに雑学を少々。  エイリアンは3形態を見せるが、最初の蟹のような姿はフェイス・ハガー(顔を覆うもの)。そして腹を突き破ってくるのはチェスト・バスター(文字通り腹を突き破る)、最終形態はビック・チャップ(大きな顎)と呼ばれる。

 冒頭に出てきた異星人の死骸は、何もないと寂しいので取り敢えず何か置いておこうと言う監督の意向によって置かれたものとか。スチルを見る限り、こっちの方がエイリアンに見えてしまうため、公開前の宣伝としてはかなり効果的だった。

 エイリアンのデザインは芸術家ギーガーの手によるものだが、この映画の大当たりのため、すっかり有名になり、彼のデザインはホラー映画ではよく用いられるようになる(画集なんか買った記憶が…)。

<追加>  不意に思いついたのだが、この映画を一言で称するなら、「アンチ・グルメ映画」…失礼しました。

(評価:★5)

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