[コメント] アフタースクール(2008/日)
巧みな脚本は「意外な展開」ばかりではない
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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劇中、「佐野美紀が出産したんだ。」という台詞がある。 一見すると同級生に対して発する普通の台詞に思えるのだが、観ていてちょっと引っかかった。 「佐野美紀が」という言い方が気になった。 話の流れから言えば「木村の子が」とか「彼女、木村と結婚してさあ」とか言う前置きがある方が自然に思えたからだ。
オチを知ってみれば、この台詞が非常に秀逸なことが分かる。 嘘をつかずに観客のミスリードを誘うギリギリのライン。
もちろんその類稀なストーリーテラーとしての才能が生み出す“意外な展開”も「練り込まれた脚本」と呼ばれる大きな要素なのだが、こうした細部の周到な“詰め”も良くできている。構成も巧い。神は細部に宿る。 内田けんじの描く“意外な展開”は決して「卑怯だ」とは言われないだろう。
『運命じゃない人』も同様だが、不思議と後味が良い。 世の中には「うわぁ」と思うような“嫌な”ドンデン返しも多くあるのに、内田けんじのはそうじゃない。「爽やか」と言ってもいい。
私は『運命じゃない人』を「美しい脚本」と評したが、相変わらず美しい。実に良心的で見事なミスリード。
正直、それ以外に言うことは何もないね。
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