[コメント] ダークナイト(2008/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
(たぶんどっかで誰かが同じようなことをもっと上手な文章で記事にしてるだろうけど、敢えて。)
■ 血や傷を可能をほぼ見せることなく、暴力と狂気を演出し、これを成功させた。
ジョーカーの行為だけみても、直接的にやることはやっている。たとえば物語前半でマフィアの会合に割りこみ披露する「えんぴつ隠し」等々。最近の一般的な作品であれば、暴力の焦点はむごたらしい傷を撮ったり耳につんざく悲鳴・絶叫なりにあわせているように思えるが、本作では血は流れただろうがそれは撮らない。
またジョーカーに爆殺を多用させることで、派手に悪のカタルシスを描いていると同時に、これにより屍体を写す手間を省いている。
悪行は、その状況を綿密に演出しまた的確に俳優が表現し、死・狂気・暴力を描く。結果よりも経緯。世界各国のレイティングをくぐり抜け、可能なかぎり全年齢対象で公開し収益を確保するべく製作会社側から出されたオーダーに従った自然な結果なのだろうか、それとも演出側のプライドか、または両方なのか。
この点はこれから映画作品を製作しようとする人間にとって、重要なポイントとして意識されることになるかもしれない。
■ 1カットがかなり短い。あたりまえ?
観ながらつい計ってしまったのだけど、ほとんどのカットが5秒前後。正直めまぐるしいほどの展開の速さに少々とまどった。『007 カジノ・ロワイヤル』でも、たしか同様な編集がなされていたような気がするが200x年のエンターテイメント作品ではこの程度が基準通りなのだろうか。ただし、本作で少しでものんびりした編集をしてしまったら3時間強はまちがいないくかかるわけで、妥当といえばそうなのかも。
■ バットマンの「鈍さ」。
本作でのバットマンの動きが、遅くて鈍い(ような気がする)。殴る拳も、一拍溜めてからヒットさせている。穿って観れば撮影2時間前まで飲んでたスタローンが中に入ってそうだし、バットモービルやその一部であるバイクも、そんなにとんでもない速度ではない。もしかしたら、赤信号ぶっちぎればウェインさんのランボルギーニの方が速い(かもしれない)。
でも、敢えてやっている。ここがバットマンの(…だめだ能力不足でうまく書けない)。
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●さらにどうでもいいことを以下に。
○劇場を出て、つい、猫背にしてときおり首かしげながら口のなかモチャモチャいわせてみた;
○↑なんか入れ歯に困ったビートたけしみたいになっちゃった;
○ストーリーやスクリーンプレイで指示した映像をそのまんま実現しちゃってるだろうハリウッドの馬鹿力の権化のような本作。でも金じゃぶじゃぶ使って成功作をきちんと作ってみせるって、低予算でそこそこ良質の映画を撮るよりひょっとしたらずっとずっと難しいことなのかもしれない;
○シンプルな構成ながら印象的な本作の音楽。『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』でもミニマルに音を積み重ねていくスコアが鮮烈だったけど、なんか今後どいつもこいつも真似しはじめそう;
○スターウォーズにおいて「帝国のマーチ」がダース・ヴェイダーの動機を表現していると同様、本作でも不安定な弦楽器(?)の旋律がジョーカー登場の動機として利用されてるけど、意外なほどな正攻法な演出になんかちょっとびっくり;
○…よく机にえんぴつが刺せたな;
○みずから派手な爆破を殺害方法に選んでいるにも関わらず、その成功にほとんど関心がないような素振りなジョーカーがちょっと不思議。病院をやっちゃったときもスイッチが入らずちょっと困っただけで、爆破できたらほぼ知らんぷり。せっかくなんだから記念に眺めてけばいいのに;
○ジョーカーの、デント検事が収容されてる病院から出てきたときの歩き方が微妙に自分の格好を意識してそうで可愛い、と思った俺は変態?;
○あのアイラインばっちりのおっさんが登場したときだけ字幕が追えなかった。もうあの目ヂカラに釘付け;
○ジョーカー高層ビルから奈落の底へダイビング「あひゃひゃひゃひゃははー」心に残る名シーンです;
○トゥーフェイスはまばたきしなくても平気;
○次回作でハル・ベリー希望;
○ブルースさん、豪華なレストランで検事のハーヴェイさんに向かって「いやここ俺の店だし」。アメリカなんてだいきらいだ。
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