[コメント] ナイト&デイ(2010/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ハリウッドのトップ・アクター/アクトレスとはこういうものだとまざまざと見せつけられる。どんな場面でも常に余裕を失わないクルーズは絶やさぬ笑みによって却って何を考えているか分からないという鉄仮面芝居。他方ディアスは感情と表情が直結している。キャラクタを精密に演じることとは、また映画的リアリティとはつまりこれである。とは云い条、クルーズにしてもディアスにしても「これくらいやって当然」の水準ではあるのだけれども。
「ディアスが後部座席から身を乗り出してハンドルを操作し、屋根に乗ったクルーズがフロントガラスから顔だけを覗かせて指示を出す」「ディアスが構えた銃を、彼女におぶさるように背中から手をまわしてクルーズが撃つ」「バイクを運転するクルーズと抱き合うような格好でディアスが後方の敵に銃撃を浴びせる」といったような二人羽織的共同アクションは確かに面白いし、格好いいし、ロマンティックだ。スクリーン・プロセスが丸分かりの古典的な車内カットと「宙を舞う無人バイク → 自動車の屋根に着地するクルーズ」などの技術的難度の高いアクション設計を共存させてしまうあたりの着想と仕事にも感心する。他にも列車アクション・航空機アクションを用意し、自動車とバイクのみならず「牛」までも参加させてしまうチェイス演出などもさすがだと思う。しかしながら、やはり優等生が苦手分野を一生懸命こなそうとしているという印象は覆せない。それを補っているのは、これもまたやはり、クルーズとディアスの個人的な資質の高さだ。マンゴールドがクルーズとディアスを輝かせていると云うより、クルーズとディアスがマンゴールドを助けている。
また、ディアスが何度も眠らされ、目が覚めるたびに自宅だったり見ず知らずの場であったりにいる自分を発見するというのも(それにはそれの面白さがあるというのはもちろん理解するけれども)乗り切れないところがある。後半部では地名キャプションを表示するだけでどんどん舞台が移行したりもする。このような展開の速さは私の好むところでもあるが、同時に、場面転換(移動)の手続きはもっとちゃんと踏んでほしいとも思う。これが古典に範を取った映画のつもりならばなおさらだ。
ディアスさんの外見上の老いは否定できません。アップカットはそれを残酷に見せつけ、撮影者もライティングなどの工夫でそれを隠すといったことをしません。しかし彼女の表情や振舞いは実にコケティッシュで、数多く用意された衣裳と髪型もその一助となっています。それにもかかわらず多くのシーンにおいて、肉体的にアクティヴな状況にはとても不釣り合いな肩提げ鞄を身につけている、というのがまたなんだか可愛らしく、面白いですね。
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