[コメント] アウトレイジ ビヨンド(2012/日)
一度終わった男(ビートたけし)が漂わせる深い無常感。口では出世のためと言いながら、先天的に安定を嫌う男(小日向文世)の躁的執着心。ヤクザの抗争話に拮抗する強度を持った、この二つの尋常ならざる心のありようが、実は一番恐ろしいということ。
前作『アウトレイジ』の致命的欠陥は話(脚本)の貧弱さだった。混乱を志向する先天的撹乱者として片岡(小日向文世)を抗争劇の裏側に配置したことで、本作は話に俄然厚味が増した。この男、公務員にしておくのがもったいないぐらい「前例」や「形式」を嫌うのだが、その何を考えているのか分らない突飛な行動が、ある種の可笑し味を醸し出し何とも憎めないキャラクターだ。
「俺達、もう終わったのかな」 「バカヤロー。まだ、始まってないぜ」 (『キッズ・リターン』)と、若い主人公に言わせてから16年。「アウトレイジ ビヨンド」の大友(ビートたけし)は、もう終わった男として登場する。前作では、鬼畜のごとく被虐の限りを尽くした大友の、悲しみを全身に湛えたような枯れ方が渋い。もちろん、あの『ソナチネ』の脂ののりきった男盛りの男の虚無とも違う。大友に漂う無常感は、65歳の北野武本人の心情とダブっているもかもしれない。
バイオレンスが安売りされた前作に対して、深い悲しみの底に潜むモンスターが、突如立ち現れたかのような度を越した残虐さ(電動ドリルとピッチングマシーン)に、大友(=監督北野)の被虐嗜好の凄みがみえ、何とも不気味で恐ろしい。一見、闇の合理に基づいて繰り広げられる丁々発止の抗争劇の裏に、自分でも抑えることのできない不条理な心情や悲しみがのぞく悲喜劇エンターテインメント。こういう北野映画が観たかったんです。
(評価:)
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