[コメント] そこのみにて光輝く(2013/日)
画面から漂うすえた臭い。古畳にたっぷりと染み込んだ血と精液のミックス臭を放つ、根源的な人間のどうしようもなさに初めは拒絶感を覚えるが、映画の中で何度も光と夜の闇とを繰り返されるうちに、どうしようもないからこそはっきりと見える、希望の輪郭が美しく、貴い。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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同じ原作である海炭市叙景とは全く似て非なるものだった。
血(家)と精液(性欲)に縛られた一家の解放(分解)の物語と言えるか。
しつこいほどの濡れ場が湿度を上げていく。
息苦しい閉塞感を暴力でこじ開けようとすればするほど出口は狭く、遠くなる。
池脇千鶴の命を削るような本気度が、鬱陶しく、もうわかった、もうわかったからと、
観るものを言わしめて圧倒し続け、出口がどこなのかと、焦燥感だけが加速する。
ラスト、一気にあの夜明けの光を浴びるふたりの美しさには心が震える。
人物設定とか、あらゆる記号を超えて、生の人間同士の化学反応に光が当てられた瞬間だった。
単純な「生きることの苦しさ」ではなく、生き物の哀しき標本とでもいえる映画だった。
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