[コメント] 運び屋(2018/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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ここ数十年、男が自由に生きることは「自分勝手」と批判される一方で、女が自由に生きることは「活き活きとして素晴らしい」というのが世の中やマスメディアの表向きの言い分で、こんなことばかりを聞かされてきたように思う。男の浮気は「人でなし」、女の浮気は「真実の恋」とかもそう。まあ、それだけ現実の世界では、まだまだ女性が割に合わない生き方を強いられていることの現れなんだろうが、「男が自由に生きること」への懐疑とか、批判とか、個人的にはもう飽きた。現実の達成度とは別に「女が自由に生きること」を素晴らしいことと言うのと同じ程度に、「男が自由に生きること」も素晴らしい、という意見がもっと出てきてもいいじゃないか、と思う。
この作品ってなんか最後は「金で時間は買えなかった」とか、「仕事に打ち込むこと」や「社会的評価を得ること」よりも、家族といっしょにいることが大事だったとか、言ってそうに見えて、実は「好き勝手に生きる」ことをさんざんやっていた人が、最後にそれを言うからカッコイイのだ、と言ってるような気がしてならない。
なんつっても90歳のヨボヨボにしてなおかっこいいクリント・イーストウッドだからそう思えるのだろうけど、元奥さんにしても、12年口をきいてくれなかった娘にしても、孫娘にしても結局は、女の言うことなんか耳を貸さない媚びない爺さんにセックスアピールを感じるから惚れているようにしか思えない。女たちだけでなくメキシコのギャングや刑事たちにも一家言ぶつことができるのも、爺さんがぶれずに自由に生きてきたからこそだろう。
本作は「男が自由に活き活きと生きる」ことの肯定を、「老いを受け入れるな」と老人問題にすり替えた不良礼賛作品だ。
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