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[コメント] 男はつらいよ 望郷篇(1970/日)

「ボク、もう寝ます。」ギャグが冴えているので爆笑する場面が多いが、きっちりしんみりさせられる場面も。特にラストの寅の台詞には切なくてホロリ。『キッズ・リターン』と同質の香りがする。 映像的にも凝ってるし口上を発する場面もあるし、いいねぇ。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







みんなで寅の就職先を考える場面も、しょーもない感じで楽しかったな。寅が天ぷらギライとは知らなかったけど。

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私的名台詞メモ:聞き取りに自信のない箇所には(?)と記。

■一人だけ遅く起きて来て、タコ社長の工場でひと騒動おこし帰ってきた寅

寅「腹すいちゃったよ。おばちゃん、朝めし朝めし。」

おばちゃん「ああ、もう冷えちゃってるよ。」

寅「上等上等。あたたかい味噌汁さえありゃ十分よ。あとはお新香、海苔、たらこ一腹、ね、からしのきいた納豆。 これにはね、生ねぎ細かく刻んでたっぷり入れてくれよ。あとは塩昆布に生卵でも添えてくれりゃあ、もうおばちゃん何にも要らねぇな、うん。」

■金の無心に家へ来た寅に向かって、涙目で訴えるさくら(後の寅の台詞の伏線)

さくら「…おばちゃん泣きそうな声だしてたわよ。おばちゃんたちの身にもなってごらんなさいお兄ちゃん。」

ヒロシ「おい、さくら、」

さくら「ほっといてよ。お兄ちゃんはね、私のたったひとりの肉親なのよ。だから私は、そのお兄ちゃんに立派な、頼りがいのある人になってもらいたいから私は言うの、ねっ? お金のことだけじゃないわよ。今日だって、工場に行って工員さんたちが真面目に働いてるのに冷やかしたりしたんでしょ。どうしてそういうこと言うのよ。額に汗して、油まみれになって働く人と、いいかっこして、ぶらぶらしてる人と、どっちがエライと思うの? お兄ちゃん、そんなことがわかんないほど頭が悪いの? 地道に働くっていうことは、尊いことなのよ。…お兄ちゃん、自分の年のこと考えたことある? いま、あと、5年か10年たって、きっと後悔するわよ。そん時になってからではね、取り返しがつかないのよ。ああ、馬鹿だったなぁと思っても、もう遅いのよ。」

ヒロシ「さくら、もうそのへんで、」

寅「ヒロシ、止めねぇでくれよ。実の妹でもなけりゃ、言っちゃあくれねぇよ、これだけのことは。ありがとう、よく言ってくれた。」

■舎弟ののぼると酒を飲みつつ説教モードに入る寅

のぼる 「…そりゃあね、田舎にけぇりてぇって思うことだってあるよ。でもね、けぇるときはやっぱり一山あててよ、100万やそこらのキャッシュ懐に入れてよ、親父の野郎、アッと言わせてやりたいね。でなきゃオレは意地でもけぇらねぇよ。」

寅「馬鹿やろう!生意気な口きくなっ。ケツに卵の殻つけた小僧っ子のくせにしやがって。てめぇなんかに、親の気持ちがわかってたまるか。セールスマンだか何だか知らないけど、てめぇ見かけはカタギだが、気持ちん中はやくざのまんまだぞ。これから、5年10年たって、いい年して、身よりもなく頼りもなく、ケツあたためるウチもなく、世間の者は相手にもしてくれねぇ。そん時になって、あぁオレは馬鹿だったなぁと後悔してももう取り返しはつかねぇんだぞ。いいか、人間、額に汗して、油にまみれて、地道に暮らさなきゃいけねぇ。そこに、早く気がつかなきゃいけねぇんだ。」

■訪ねてきたさくらを褒めちぎる豆腐屋母と娘(セツコ)を前に、謙遜しまくる寅

母「謙遜するにもほどがあるよ。食うや食わずの貧乏育ちの女工あがりだなんて言うからどんな妹さんかと思ったら、立派な若奥様だよね。」

セツコ「うん。」

寅「へへへへ、とんでもない。あんなみっともないおかみ、とても人前には、」

母「そんなこと言うもんじゃないよ。」

セツコ「そうよ、寅さん団子屋団子屋って言うから、私てっきり屋台のお店だとばかり思ってたら、ねえ、立派なお店みたいじゃない。」

寅「何が立派なもんだよあんなもの、犬小屋に毛が生えたようなもんですよ。」

母「帝釈様の門前町にあるんだろ、立派なもんだよ。」

寅「な、帝釈様なんて(?)、豚小屋みたいなもんですよ。」

セツコ「あら有名なお寺じゃない。私写真で見たことあるわよ、あの、裏に江戸川が流れてて。」

寅「いやぁ、とんでもないあんな川、どぶ川みたいなもんですよ。」

母「ちょっと、何も江戸川まで謙遜するこたないだろ。」

■浦安の豆腐屋で、泣きべそ顔の娘(セツコ)をなぐさめようと口上を披露する寅

セツコ「うわぁ、きれいなお月様。」

寅「ああ、そうだね。…天に軌道のある如く、人それぞれに運命というものを持っております、か。」

セツコ「うふふ、何?」

寅「おもしろい?…サンで死んだが三島のおせん、おせんばかりがおなごじゃないよ。白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水くさい。四ッ谷赤坂麹町、ちゃらちゃら流れるお茶の水、粋な姐ちゃん立ちしょんべん。」

■傷心のまま再び旅に出た寅とのぼるの、海辺での偶然の再会

寅「ひょー!」

のぼる「あーっ!」

寅「お控えなすって!」

のぼる「お控えなすって!」

寅「それじゃー仁義になりません。まずあんさんからお先にお控えなすって。」

のぼる「それじゃ控えさせていただきます。」

寅「さっそくお控えなすってありがとうさんにございます。私、生まれも育ちも葛飾柴又です。姓は車、名は寅次郎。人呼んでフーテンの寅とはっします。うひゃひゃひゃ。」

のぼる「うははは。兄貴いー、」(寅に駈けよりつつ)

寅「ええ?」(迎えつつ)

のぼる「カタギになったんじゃねぇのかよ。」

寅「それはてめえだろ、こんなとこ何ウロウロしてんだよ馬鹿やろうクソなんかたれてんだよチキショー。」

のぼる「うはは、ちっとも変わってねぇよ。」

寅「馬鹿やろう、徐々に変わるんだよっ。いっぺんに変わったら身体にわりぃじゃねぇかよ、このやろー。」

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