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[コメント] 地球防衛軍(1957/日)

映画館の座席で、スクリーンに向きあって、伊福部昭の音楽が流れた時、私は人生の喜びを一つ、知りました...
シーチキン

中学生のとき、私にはO君という仲の良い友人がいた。彼は熱心な映画ファンであった。映画ファンといっても、当時はビデオもそんなに普及してないし、田舎だから映画館も少なかったが、彼は、雑誌やレコードを集め、TV放映の映画は欠かさず見て、私にもいろいろと映画の話をしてくれた。 (余談だが、私は彼から、正しい拍手の仕方を教わった)

そんな彼がある時、「これ聴いてみろ。絶対カッコいいから」と貸してくれたのが、「伊福部昭の世界」(だったと思う)というLPだ。そこには『地球防衛軍』や『海底軍艦』、『ゴジラ』といった伊福部昭の名曲がずらっと収録されていて、ジャケットとかには名シーンの写真があった。 (ちなみに『ゴジラ』のテーマ音楽は、「オー、イッツ、ゴージーラー!」という台詞に続いて始まるのである)

さっそく聴いて、私はすっかりそのトリコになってしまった。中でも『地球防衛軍』の音楽がとってもカッコよく思えて、翌日、彼にもそう言った。彼は目を輝かせて、「おお、そうじゃろう。ぶちカッコええじゃろ。しばらく貸しちょいたるわ」と言って、それから1,2週間は、彼は私に、いかに『地球防衛軍』がカッコいい映画であるか、語りまくってくれた。

といっても、『地球防衛軍』はすでに大昔の映画で、ビデオも身近にない。きっと彼もかき集めた雑誌やレコードのジャケット、見た人からの話を聞いて、それを私に教えてくれてたんじゃないかなと、思っている。 (70年代末に、「スターウォーズ」全9部のプロットが掲載されたこともある「スター・ログ」という雑誌の存在も彼から教わった)

故郷を離れて随分たったある夏、時々いくミニシアターで、お盆期間に「特撮映画大会」を組むというニュース。私は心躍らせてそのチラシを持って帰り、「ひょっとして」と思いながらプログラムを見た。そこに『地球防衛軍』のタイトルが…。私は、期間中一回しか上映されないその日はなにがあっても、という不退転の決意でお盆まで過ごし、ついに観たのである。

映画はとっても楽しく、上映中はずっとワクワクしていた。「マーカライトファープ」とそれを運ぶベータ号の飛行中のバランスが、まるで上からピアノ線で吊してるみたいにヘンだったりしたこととか、「怪獣大図鑑」から仕入れた知識では無敵だった「モゲラ」の出番があまりにも短かったとか、全然気にならない。

もし、O君と一緒にこの映画を見たらならば、きっと私たちは、「あのシーンが」「あの音楽が」「あの円盤が、光線が」、なんて延々と盛り上がり続けたにちがいない。

こんな素敵な映画を、採点するなら、満点に決まってる。

(評価:★5)

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