[コメント] 道(1954/伊)
人間になろうとしてなれなかったゼンマイ仕掛け人形と、人間のなんたるかを知らなかった獣との、滑稽で悲しい旅。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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ジェルソミーナの、ゼンマイ仕掛け人形のような滑稽な動作と表情に、少しずつ人間としての丸みがそなわってゆく。人間の何たるかを知らなかった獣ザンパノは、その獣性にまかせて生きていたがゆえに彼女の変化に気づかなかった。決定的な事件が起きたあのとき、人間になりかけていたはずの彼女は、また人形に逆戻りしてしまった。それも、仕掛けの壊れてしまった人形に。壊れた人形は、再び人間に戻ることはおろか、正常に動作することももうかなわない。
彼女のくるくると目まぐるしく変わる表情。道化者の笑いと女の涙、その記憶。彼女を捨てたあの日の、吹きすさぶ風の冷たさと雪の白さの記憶。物悲しいメロディ。数年後、風聞のみで聞かされることになる彼女の「その後」。虚ろな表情で、誰に聞かせるわけでもなく、壊れたオルゴールのようにずっと「あの曲」を口ずさみつづけていたであろう彼女の後ろ姿を想像するにつけ、激しい心痛と後悔をともなって記憶(おもいで)がフラッシュバックする。
彼がここで初めて抱くことになる後悔と悲哀の情は、まぎれもなく人間のもの。彼はここで初めて人間に目覚める。あまりにも悲しい目覚め。いい年こいた脂ギッシュオヤジが夜の浜辺で月明かりの下むせび泣く。普通に考えたらおそろしくうっとうしいはずのこの光景も、それゆえに心を打つ。
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