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[コメント] キャリー(1976/米)

映画館で3回観た。だって『ロッキー』が同時上映だったから‥‥‥‥子どもだった私を襲うシシー・スペイセクの呪い
パッチ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







シシー・スペイセク。一目見て、胸が悪くなった。正直に言って生理的に受け付けない気がした。だが‥‥

■3回観た

この映画が封切りされた頃、私は映画かぶれした少年だった。『ロッキー』にはまって、映画館に3回見に行った。たまたまこの映画が同時上映だったので、これも3回観た。観なくてもよかったわけだが、実は『ロッキー』を2回ずつ観るために、交互に上映される『キャリー』も3回観たわけだ。

■胸が悪くなるシシーの存在感

実は、シシー・スペイセクを観ていて、3回とも気持ちが悪くなった。あまりにもリアルだ。何が?って、彼女はいかにもいじめられやすい、不安をいっぱい抱えた感じがする。役にはまりすぎで、あまりに切なすぎる。冒頭の生理にまつわるお話から、バレーや母親の仕打ち、いろんなことが全て彼女のキャラクターに生々しく響くのだ。血に染まった服が彼女にまとわりつく様は、私の胸を悪くした。当時の映画雑誌で読んだんでうろ覚えだが、確か豚の血をバケツ一杯かぶるシーンのあと、全ての撮影が終わるまで風呂にも入らず、そのまま過ごしたという。そういう情報を仕入れて見に行っていたせいもある。

■自分の偏見と俳優を見る目のギャップに苦しむ

でも気持ち悪くなることがわかっていて、3回観てしまった。生理的に受け付けづらいタイプなのに、それを我慢しても彼女を観なくちゃいけないと思った。いや、生理的に好きじゃない、「こういうタイプの女性をどこか蔑んでいると言う意識」が、自分の気持ちを揺さぶっているのだ。確か彼女はこの時27歳。高校生をやらせれば、シシーか、マイケル・J・フォックスかって感じだが、この年齢も禍している。

凄い俳優だという意識も私を困惑させた。内気な顔、いたたまれない仕草、不安な表情、そういう子が喜ぶ時のけなげさ、裏切られたときの悲しい目、能力を発揮するときの悲壮な姿。全てにとにかく「生々」しい。だが、それ以上に「彼女そのものを認めたくない」という私の「偏見」と「素晴らしい俳優」だという「評価」が葛藤し、物語の見事な演出と相まってしまい、心底私を不安にさせた。

■なぜ3回観たのか、今になってちょっとわかった気がする

そして、自分の「人を見る目」に疑いを持ち、人を蔑んでいる自分の「偏見への後ろめたさ」を背負って、映画館に確かめに行ったのだと思う。そして私はその後も何度か彼女の作品を観に行くことになる。彼女の俳優としての凄さを確認するために。

(評価:★4)

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