[コメント] クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲(2001/日)
万国博と夕焼けの町。それは「匂い」によって混沌の仮面をかぶせられた秩序だ。これからいかなる町を創造していくか判らない、しんのすけら「混沌の子供」に未来はバトンタッチされねばならない。
未だにオレはいい歳をして独身だ。ケンの気持ちがよく判る。バズやベッツイ&クリスに、トヨタ2000GTや三輪トラックに、足踏みミシンや足つきテレビや丸ポストに、そしてあの「太陽の塔」に涙する。昭和40年代の「匂い」はたまらなく好きだ。だが、それらが来るべき未来ではない、過去のイベントの中にカテゴライズされた「古きよき夢」という秩序に閉じ込められたもろもろであることを知っている。
整然とした過去を振り返ることは誰でもすることだ。悪いことじゃない。だがそれらは古いオモチャ箱の中に閉じ込められるべきで、その中に埋まって暮らすためのものじゃない。
だからひろしは、みさえは、しんのすけやひまわりを産み落とした。秩序を破壊して再構築する未来の体現者を。オレには手にすることができない未来を手にする者を。
今でもオレは、土管と煙突と道端のゴミ箱のある風景を漫画に描くことがある。記憶の片隅にしかない下町をシンボライズした、「なつかしい風景」だ。だが、今の町にそんな風景がないことを嘆くことはしない。この国には無数のしんのすけがいる。彼らに「歪められた」社会を喜んでオレは受け入れる。最後にケンが笑ってそうしたようにだ。そして、チャコと子供が作れたかもしれない彼を、ほんの少しだけ羨ましく思う。
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