[コメント] ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃(2001/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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金子修介監督は『ガメラ』の時もそうだが、バランスが取れた怪獣マニアが作った作品と言う感じに仕上がっている。素晴らしい出来である。
キャスティングだが、久々に「生ける特撮」天本英世が登場しているのが嬉しいし、佐野史郎の存在も良い。宇崎竜堂も朴訥とした軍人の役を上手く演じている。高島ファミリーが出ていないのだけが心残りなくらいか(笑)
ストーリーにゴジラに対応して3体の聖獣が出ると言うので、どういう風になるのかと思ったら、これも上手く仕上がっている。冒頭の説明のシーンで笑える人間はゴジラ好き。結局1956年版『ゴジラ』とアメリカで作られた『GODZILLA』だけを残し、他の映画は全て切ってしまっているが、それは英断だろう。
最初にゴジラの登場シーンは清水市と言う地方に上陸させたことで、ゴジラの巨大さがよく表されていた。こんな迫力あるゴジラ見たのも久々だ(しかもマニアックな市街地の作り!)。容赦なく人を踏みつぶし、のし歩く姿。今までここまで一般人とゴジラとの対比を描けたのは一作目を除けば今回がまさしく初めて。とにかくゴジラの圧倒的迫力に押される。
その後、箱根で最初の聖獣であるバラゴンとの戦いになるが、今まで誰も行ったことがない試みがなされている。ゴジラとバラゴンの二体、体格がまるで違うのだ(バラゴンがゴジラの2/3くらい)。中に人間が入る都合上、基本的に怪獣は同体型という不文律をあっさりと破ってくれた。しかもバラゴン側からのあおりでその大きさの対比を特徴づけているアングル付けは秀逸。スタッフロールで知ったが、あれは女性が入っているそうな。なるほど。考えつかなかった。
そして横浜でのモスラおよびギドラとの戦いとなるが、ギドラの3段階変形は狙い通り格好良かった。ただのギドラがモスラの力を受け、2段階目の変形。これで金色に輝き、閉じていた翼が開いて空中を浮遊する様(この時、ギドラがキング・ギドラと呼ばれる)。そして神像のかけらが戻って3段階目の変形(違いは雷撃を光線として吐けるかどうか)。これがなかなか劇的で、ぐっとくる。なるほど、ラドンではなくキング・ギドラにした理由はここにあるのね(^^;
そして人間側の物語が地に足が着いた雰囲気なので(そのまんま『ガメラ』だけど)、それも良かった。何せ今回は逃げまどうだけでなく、しっかり殺される描写まで出てくるし、ちゃんと抵抗もしている。
さて、褒めてばかりも何なので(?)、少し難点も言っておくことにしよう。
先ず、ゴジラの造形だが、非常に重厚に出来ていて、目も怖いにも関わらず、歩く姿はまんま人間。モスラは全然動かない。ぬいぐるみ中心よりCG多用すべきだった。バラゴンは顔が鬼からシーサーに変わった。魅せ方が上手いだけに、アップになった時にそれらのアラが気になってしまう。
防衛軍は怪獣同士の戦いにおいて、その足下で活動している。何に命を懸けているのか分からぬが、あれじゃ犬死にだ。
それから設定のアラを言わせてもらうと、ゴジラの吹く火炎は放射能を帯びているようで、チェレンコフ光を帯びているが、被爆については殆ど言及されておらず、破壊した跡も焦げていない。水中で怪獣が格闘しているというのに、その直下で潜水艇が動けるわけがない。空気と違い、水は波動の伝わり方が極端に早いため、水にあんな衝撃を与えたら潜水艇の中は生物が住める環境ではなくなっているはず(人間の形を留めずペースト状になるんじゃないかな?)。更にキング・ギドラが水上や水中で電撃を吐いているのに、伝導体である水を泳いでいる人間が無傷。
冒頭でこれは「最高のゴジラ映画」と書かせてもらったが、これは褒め言であると同時に、「ゴジラ」と言う素材の持つ限界性をも感じると言うことでもある。この作品は良くできた作品だが、最高の怪獣映画にはなり得ない。ゴジラの亜流というのはそこまでしか作れないのかもしれない。金子修介監督は実に巧みに映画作りをしているが、「これをやって欲しかった」と言う作りだと、満足は行くが、衝撃は与えられない。『ガメラ』の時も持った感想なのだが、非常に優等生的な出来映えではあるが、それを超えることが出来てない。
金子監督は上手いだけに、それだけで終わって欲しくはない。ファンの希望通りではなく、裏切るような作品作りをして欲しい、と言うのは贅沢な訴えか?
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