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[コメント] アザーズ(2001/米=仏=スペイン)

「ネタバレ」という概念が、途中から、どうでもよくなるカンカク(=感覚、間隔)。
muffler&silencer[消音装置]

一言で言えば、間延びしている。この映画世界には、こういう映画だからこそ、不可欠と思われる「空気の緊張感」がない。霧とカーテンに閉ざされたはずの屋敷にも閉塞感がいまいち足りない。息つまるような感覚、窒息感がないのだ。

プロットが過去の映画作品の模倣であろうと、映画世界が(この映画が目指すところで)魅力があり、完成されているものならば、私はあまり気にしない。

そして、わたしがこの『(ジ・)アザーズ』を観て、アレハンドロ・アメナバール監督が目指した映画世界の“空気”は、皆さんがおっしゃる作品よりも、物語はかなり違うものだが、イングマール・ベルイマン監督の『叫びとささやき』とビクトル・エリセ監督の『ミツバチのささやき』のような(あるいは両作品の中間点にある)空気にあったのではないだろうかと思った。

雰囲気は似ているが、この『(ジ・)アザーズ』の空気は、このニ作品には足元にも及ばない。

だから、方々で絶賛されているニコール・キッドマンの演技も、映画世界と呼応した恐怖感の演技が生まれず、単なる「上手なお芝居」レベルにとどまっている。子どもたちの演技は注目すべきものはあるが、やはりどこか映画世界から別個のところで浮揚している感があるのは否めない。どちらかと言うと、彼らのこの作品における演技は(物語自体も)、映画向きではなく、舞台向きだ。

こういう作品世界がお好きな方には、是非、ベルイマンの『叫びとささやき』だけでもご覧になっていただきたい。本当の恐怖の“空気”、本当に映画世界の“空気”と呼応した演技がここにあります。少なくとも、この映画のラストに漂う、歌って踊って終わる、あのコメディー・ホラーを思い出してしまうような“隙”はありません。

追記:あえて「ネタバレなし」に挑戦してみたんですが…大丈夫ですよね?

〔★2.75〕

[with ji/ワーナー・マイカル・シネマズ茨木/24.5.02]■[review:5.26.02up]

(評価:★3)

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