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[コメント] マルホランド・ドライブ(2001/米=仏)

追想。(レビューは作品の構成に言及)
グラント・リー・バッファロー

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







私にとって、デビッド・リンチ作品は本作で5本目の鑑賞なのだが、『ブルー・ベルベット』、『ロスト・ハイウェイ』、一連のツイン・ピークス作品は観たことがなかったので、いわゆるリンチ本流の作品は初めてと言ってよいかもしれない。

当初の世界が別の世界に移り変わっていく…。なんだ…これ…、ビートルズの"A Day In The Life"か?…そのわりには、同じ俳優が演じているし、同じ場所が登場するなあ…と思っていると、その後怒涛のような展開が押し寄せ、終幕。どっちらけるような観客の反応。いや君たち、どっちらけている場合ではないだろ、と思いながら、狐につままれたような気持ちになる。その後、吐き気をもよおし熱を出して、暫くうなされる。知恵熱だったのか?

メメント』の時に散々繰り返された解釈の嵐。その先に待ち受けているもの、「一つの結論などありはしない」。今回もそうなのか?ただそうだとしても、あれだけ伏線を匂わせる人物、設定、小道具を提示されたら、観たままをそのまま受け取るなどとある種高尚な受けとめ方などはできず、その先に「一つの結論はない」という標識が待ち構えていることを知りつつも、解釈せずにはいられない。

最初の世界←最後の世界というベクトル(その逆のベクトルがあるかどうかは知らない)、女優の怨恨などといった要素は全体の構造に含まれる、ということぐらいは確かでないと、もう足場がなくて自分には耐えがたい。(繰り返しになるが、"nothing is real"を受け止められるほど私は悟りを得ていないし、「あ、だから、あの銃の音は現実味がなかったのね」とか小さな発見の喜びも少しぐらいは味わいたい)

確かにあの歌は震えがくるほど美しいし、リンチは闇と原色のなかで浮かびあがる女性の妖艶さを描ける随一の監督だと感嘆する(そういう意味では『メメント』の荒ぶれた雰囲気ぐらいでは太刀打ちできない)。しかし、作品全体についてはどうにも不快感を禁じえない。謎をとく餌のようなものを振りまいておいて、それに実際飛びつくと霞のように消えてしまう感覚は、少なくとも私にはそれほど前向きに受け取れない。(最初から霞と割りきって、餌をまかないコーエン兄弟についてはそう思わないのだが…)

まあ、これも好みの問題にすぎないのだが、疑問の余地の(ほぼ)ない最低限の展開(全体がそうでなくともよいが)があって、そこから多様な解釈や批評が産まれると個人的には思っているので、最初から前提のないもの(∞とかゼロ?)については非常にコメントは居心地の悪いものになる。かといって、ありのままを受けとめることもできない。4点の要素と2点の要素が混在し、結果としてこの点数。(★3.5)

(評価:★3)

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