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[コメント] 大いなる幻影(1937/仏)

自由=音楽。平和=言語。
uyo

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







いやあ、最近の自分の野卑た人生を恥じ入るような、実に上品な映像の「名作」でした。

ところで、肉体的な拘束がある時、人は、「音楽」に精神の自由を見つけるものなのでしょうか。

「ラ・マルセイエーズ(祖国の勝利)」を高らかに"唄う"事で、独房に閉じ込められたギャバンが、その辛さについに耐え切れず看守に怒鳴り散らすと、看守は困ったようにハーモニカを置いて行く。そのハーモニカを"演奏"することで、独房の辛さを紛らわす主人公。そしてもちろん、脱走の時の「笛」「鍋釜」による”演奏”。更に、まさに2人が脱出する時に高らかに鳴り響くBGM。そう言えば、『ショーシャンクの空に』でも、『網走番外地』でも・・・・。(これ以上はネタバレになるので書きません)

そしてもう一つ、「言語」に、平和の鍵を隠しているような気がしました。

ギャバンが「言葉の通じない」さっきの看守に、「フランス語が聞きたいんだ」と、怒鳴り、訴えかけた後、困ったように房の外に出た守衛に、他の看守が「彼はどうしたんだ?」と尋ねると、守衛は、「戦争が長いからな」と、答えます。また、囮となって、ドイツ兵の目を引き付けている ピエール・フレネー に、シュトロハイムが、(共通言語による)「英語」で「戻ってこい」と、心から語り掛けます。最後に、かくまわれたディタ・パルロの家で、脱走した2人は、2、3のフランス語を教えています。

「コミュニケーションを取り、お互いに少しでも相手を理解しあおうとする事で、人間同士の争いは回避出来る(可能性がある)。」と言うメッセージを感じました。

そしてユダヤ人と主人公との友情。(この映画が作られた「年」!)

けんか別れしそうになった2人が、歌の歌詞を引き継いで唄う事で、再び行動を共にするシーンは、「音楽」と、「言語」が、同時に立ち表れた、もっとも情感のあるシーンだと思います。

(評価:★5)

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このコメントを気に入った人達 (13 人)Orpheus ぽんしゅう[*] りかちゅ[*] たわば ハム[*] Kavalier[*] crossage[*] ルッコラ いくけん 甘崎庵[*] ina ジョー・チップ くたー[*]

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