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[コメント] ゴッドファーザー(1972/米)

映画にしか出来ない。
町田

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







今更、俺のような若造が、この有名作について、とやかく意見したところで何の意味もないし、発見もないだろう。んなこたぁ判ってる。これはあくまで、一観客、一映画ファンとしての自分自身に対する確認である。

俺がこの映画で最も感激したのはやはりラストシーンである。妻ダイアン・キートンの質問に、臆することもなく「NO」と言い放ったマイケル=パチーノ。我々はそれが明らかな嘘であることを知っていたからこそ、彼のそういうふてぶてしさを、信念の強さ、血族への思いの強さの現れとして、一種の爽快感をもって迎えることが出来るわけだけれど、それ以上に凄まじいのはそれに続く、実に映画的な、映画だからこそ表現できる、いや映画にしか表現出来ないであろう、幾つかのショットである。

部屋の外にいるダイアン・キートンが室内で語り合うパチーノらを見つめるショット。その画面造型である。けにろんさんのコメントにある「当時、常識外れと云われた強烈な」被写界深度によって、室外と室内は全く等価に映し出される。この時、どちらか一方にフォーカスを合わせていたのなら、あの衝撃は生まれなかったろう。手前(キートン側)がボケても、奥(パチーノ側)がボケても、全く意味をなさない。深度。奥行き。距離感である。二人の間に横たわる、この圧倒的な距離感、実際を越え極限まで延長された距離感が、物語の残酷さを際立たせ、観る者に真実の重みを突きつける。

言葉と表情で嘘を吐き、背景と人物配置で真実を語る。

そんなことは映画にしか出来ない。

<デジタル・リマスター版>

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (13 人)たろ[*] 大魔人[*] McCammon 緑雨[*] たかひこ[*] movableinferno[*] JKF[*] らーふる当番[*] けにろん[*] uyo[*] sawa:38[*] ゑぎ ざいあす

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