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[コメント] Mr.インクレディブル(2004/米)

アイアン・ジャイアント』のバード監督がまたまたやってくれました!真のヒーローにマントはいらない。
ジョー・チップ

この映画は、一見強いヒーロー万歳のように見えるが、そう単純ではない。超人も普通の人も、自分の持っている資質を精一杯伸ばしてあるがままに生きるべきだ、と言うメッセージがあり、『アイアン・ジャイアント』の「なりたいものになれ!」というテーマと通じるものがある。

自分にできることがあるのにそれができない、またはさせない社会はやはりおかしい。そのおかしな社会が実は自由で民主的なアメリカの社会にもあるのだ、という展開にはこの映画の知的レベルの高さを感じさせる。前半の、主人公がヒーローからサラリーマンに転進する過程のシーンは子供向けにしては結構長く、シリアスであり(客の利益より株主の利益だ!って、そこまで言うかー?)、後半の主人公たちの行動との対比がカタルシスを生む。

また、どんな手を使っても相手を打ち負かしたい、資質を伴わない自己顕示、虚勢など、ゆがんだ競争社会で囚われがちな心性の象徴としての「マント」という発想が面白い。コスチュームデザイナー(なかなかの人物)が、主人公に「ヒーローにマントはいらない」としつこく説教をたれたり、逆に敵はマントにこだわるという点もよく考えられている。

またこの監督の作品は2作しか観ていないが、子供に銃を向ける、というシーンを意識的に出しているように見える。このご時勢に勇気のいることだが、身を守る道具としてではなく、あるがままに生きることを阻む非寛容の象徴として描いており、それゆえそういうシーンが必要なのであろう。 同じ子供映画作家として、『E.T.』のDVDでライフルをトランシーバーに変更してしまったスピルバーグとの方向性を比較して見るのも面白いだろう。

(評価:★4)

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